全日本モトクロス開幕戦・決勝レポート
2022年の全日本モトクロス選手権シリーズは、熊本県のHSR九州で開幕。4月10日(日)には各クラスの決勝レースが実施されました。予選が繰り広げられた前日に続いて天候に恵まれ、コースはドライコンディション。日差しは強く最高気温は25℃まで上昇し、まるで初夏のような陽気でした。アップダウンがほとんどない土地に設けられた、広いコース幅も特徴とするコースは、基本的なレイアウトをこれまでから踏襲。本来は阿蘇の火山灰に由来する黒土の路面ですが、大会前に大量の山砂を搬入しながらメンテナンスされました。
IA1ヒート1
ヤマハファクトリーチームの富田俊樹(#2)がホールショット。ホンダに乗る小方誠(#5)と大城魁之輔(#22)、カワサキファクトリーチームの能塚智寛(#3)が続くと、まずは能塚が大城をパスし、小方はすぐに5番手まで後退しました。さらに、ヤマハファクトリーチームの渡辺祐介(#4)も大城の攻略に成功。1周目を富田、能塚、渡辺、大城、小方の順でクリアしました。2周目、能塚は後続を2秒ほど引き離しつつトップの富田に肉迫。3周目には両者が激しいバトルを繰り広げて何度か順位を入れ替え、能塚が先頭に立ちました。ところが翌周、能塚は転倒を喫して上位勢から大きく遅れた6番手に後退。逆に渡辺と大城は富田との距離を詰め、トップグループは3台になりました。
5周目、大城が全日本最高峰クラスの初レースとは思えない積極的な走りで、渡辺の背後に接近。しかし翌周以降、トップグループの3台はそれぞれ少しずつ間隔を開けていきました。この6周目、能塚は再び転倒して12番手までポジションダウン。トップグループから大きく遅れた4番手集団は、4周目からホンダに乗るIA1ルーキーの大倉由揮(#23)が小方に代わりけん引していましたが、その大倉は7周目に順位を落とし、こちらもIA1初挑戦となるカワサキマシンの内田篤基(#25)が4番手に浮上しました。
レース後半、富田はリードをじわじわと拡大しながらトップを快走。そのまま逃げ切り、富田が優勝、渡辺が2位、渡辺に離されながらも粘り強く走り切った大城が3位でした。内田は4位、小方は5位、1周目にミスで大きく出遅れながらも挽回したホンダマシンの大塚豪太(#7)が6位でした。
●優勝 富田俊樹(#2)
昨年の最終戦でチャンピオンを逃し、とても悔しい思いを味わったので、このシーズンオフはとにかくハードにやってきました。とはいえレースは、蓋を開けてみないとわからないので、不安なところもありました。ヒート1で勝てたのは久しぶり。まずは満足しています。
●2位 渡辺祐介(#4)
シーズン最初のレースで、スタート前は緊張していたのですが、チームメイトの富田選手とワン・ツーを獲れたことは良かったと思っています。昨年は、シーズン途中までランク首位だったのに、自分で崩してしまいました。昨年以上に万全の状態で臨めているので、次こそチームメイトを倒して勝ちたいです。
●3位 大城魁之輔(#22)
正直に言うと、IA1最初のレースで表彰台に立てたことはうれしく思っています。シーズンオフに450での走行をスタートし、ホンダのおかげで乗り込みに時間をかけることができました。その成果が少し出せたと思いますが、まだヤマハ勢に負けているので、少しでも追いつけるように頑張りたいです。
IA1ヒート2
好スタートを決めたのは内田篤基(#25)。これに星野優位(#8)、富田俊樹(#2)、小方誠(#5)らが続くと、混戦の中で富田が2番手、能塚智寛(#3)が3番手にポジションアップ。さらに能塚が富田を抜いて2番手に浮上し、1周目をクリアしました。内田は、この周だけで約3秒もリード。2~3周目もこれを維持しましたが、4周目に能塚がペースを上げて近づき、トップ争いは接近戦となりました。5周目、能塚が内田をパス。さらに富田もこの2台と距離を詰め、内田を抜いて2番手に順位を上げました。
6周目、抜かれた後も粘りをみせようとしていた内田がクラッシュしてリタイヤ。これで小方が3番手、大倉由揮(#23)が4番手、大城魁之輔(#22)が5番手、渡辺祐介(#4)が6番手となりました。そして能塚と富田、10秒近く遅れて小方と大倉、さらに5~6秒離れて大城と渡辺が、それぞれ接近戦を繰り広げる展開に。8周目、能塚と富田のバトルは激しさを増し、渡辺は大城の攻略に成功しました。
9周目、富田が能塚をパスしてトップに浮上。10周目には約3秒のリードを奪い、翌周もさらにその差を広げて、逃げ切り態勢に入りました。11周目、小方を攻略するチャンスをうかがっていた大倉がエンストにより数秒遅れ、翌周には転倒を喫して5番手に後退。これで渡辺が4番手に浮上しました。そしてレースは15周でチェッカー。富田が勝利を収めて開幕戦でIA1自身初の両ヒート優勝を決め、能塚が2位、小方が3位で表彰台に立ちました。渡辺が4位、大倉が5位、大城が6位に入賞しています。
●優勝 富田俊樹(#2)
最高のシーズンスタートを切ることができました。自分自身、IA1で両ヒート優勝というのは初めてなので、とてもうれしく思っています。チームがマシンをパーフェクトな状態に仕上げてくれ、多くのスポンサーさんのおかげもあって勝てました。ありがとうございました!
●2位 能塚智寛(#3)
ヒート1、ヒート2ともに走りが良くなく、ヒート1は自滅しました。ヒート2こそトッチ君を頑張ってブロックしようと思ったのですが、まるでもてあそばれているかのようにあっさり抜かれちゃいました。次の関東大会では、スタートから逃げ切って勝ちたいです。
●3位 小方誠(#5)
HSR九州はとても好きなコース。今大会は整備も行き届いていて、観客の方々も楽しめたんじゃないかと思います。上位の2名はワークスチームですが、自分は今年、プライベーターとして戦います。ノーマルマシンでも、こうやって表彰台に立てたことがうれしいです。
IA2ヒート1
レース時間はいつもの半分となる15分+1周。そのヒート1では小川孝平(#17)がホールショットを奪い、ヤマハファクトリーチームから全日本に今季フル参戦するオーストラリア出身のジェイ・ウィルソン(#16)が2番手で続きました。1周目、早くもウィルソンが先行。予選から好調だったIA2年目の福村鎌(#18)が、2番手に浮上しました。小川は3番手、鈴村英喜(#9)が4番手、IAルーキーの田中淳也(#05)が5番手で1周目をクリア。2周目、福村がミスにより後退し、小川が2番手に浮上しました。
この段階で、トップのウィルソンは約4秒のリード。さらに翌周以降もアドバンテージを拡大していきました。2番手争いは、小川が少しずつ後続を引き離し、鈴村は3番手をキープ。レースが早くも後半に入った5周目、小川から4~5秒ほど遅れた鈴村の背後に、柳瀬大河(#10)や田中らをパスして順位を上げてきた中島漱也(#5)が迫りました。そして6周目に、中島が鈴村をパス。さらに翌周には、田中を前の周に攻略した柳瀬も、鈴村を抜きました。レース後半、ウィルソンはペースをコントロールしつつもトップを独走。レースは8周でチェッカーとなり、ウィルソンが優勝、小川が2位、小川まであと一歩のところに迫った中島が3位でした。
●優勝 ジェイ・ウィルソン(#16)
昨年のSUGOにもスポット参戦しましたが、今年は日本のヤマハファクトリーチームから全日本にフル参戦します。自分に与えられた役割はいろいろあるのですが、まずは最初のレースで自分がしっかり勝つことができてうれしいです。チームと家族、一緒に来日してくれた奥さんと娘に感謝しています。
●2位 小川孝平(#17)
いろいろありまして、今年は伊藤モータースの社長のおかげでレースを続けられています。28歳なのですが、エントリーリストを見たら自分が最年長で驚きました。予選ではルーキーの田中淳也選手、決勝では中島漱也選手など10代の選手も多いですが、若手には負けられません。
●3位 中島漱也(#5)
予選では、焦りから2回も転倒してしまいました。予選18番手でいいグリッドが選べない状況でしたが、なんとか表彰台圏内までは追い上げることができました。ジェイ・ウィルソン選手と小川孝平選手が速く、ここに追いつけなかったことがとても悔しいです。
IA2ヒート2
小川孝平(#17)がホールショット。柳瀬大河(#10)が2番手で続きましたが、すぐにジェイ・ウィルソン(#16)がトップに立ち、1周目はウィルソン、小川、柳瀬、鈴村英喜(#9)、中島漱也(#5)の順でクリアしました。2周目、小川はウィルソンを必死で追い、柳瀬は小川から4秒ほど遅れ、鈴村も柳瀬と約3秒差。一方で中島は鈴村を2秒ほど後方でマークし、西條悠人(#7)を先頭とする6番手争いの集団は、中島から大きく遅れました。4周目まで、小川はウィルソンから2秒程度の遅れを維持。これでトップ集団は2台に絞られましたが、5周目に小川がミスでラップタイムを落とし、ウィルソンが単独トップになりました。
4周目には、中島が鈴村をパスしていて、5周目には小川と柳瀬と中島がやや縦長の2番手争いのグループに。翌周にはこの3台が近づき、完全にひとつの集団となりました。そして7周目、中島が柳瀬に肉迫。この周は柳瀬が順位を守りましたが、最終ラップとなった8周目の前半で中島が先行しました。再逆転を狙った柳瀬は、抜かれた直後に転倒。再スタートを切ったものの、鈴村に抜かれました。レースは、ウィルソンが危なげなく走り切って勝利。小川が2位、中島が3位、鈴村が4位、柳瀬が5位、西條が6位となりました。
●優勝 ジェイ・ウィルソン(#16)
EPS(※2022年3月に正式発表された二輪車用ステアリングサポートシステム)の開発メンバーにも感謝しています。ハードワークのおかげで、非常にいいバイクに仕上がっていると思います。この技術が、未来のヤマハマシンを大きく発展させることを予感しています。
●2位 小川孝平(#17)
ジェイ・ウィルソン選手はとても速いですが、このヒートの前半はそれなりについていくことができました。自分のミスで離されてしまったことが残念ですが、今後のレースではもっと長時間、なるべく近いところを走り続けられるように頑張っていきたいです。
●3位 中島漱也(#5)
ヒート1でも前のふたりが速く、ヒート2はもっと頑張ろうと思っていたのですが、グリッドの悪さもあってスタートに失敗。追い上げのレースになってしまいました。でも、シーズンオフにやってきたことがプラスになっていることが実感できたので、そこはうれしいです。
IA2ヒート3
予選でも好調だった福村鎌(#18)がホールショット。眞野凌輔(#23)や佐藤沙弐(#55)が続きましたが、すぐにジェイ・ウィルソン(#16)がトップに浮上し、中島漱也(#5)が続きました。2周目になると、小川孝平(#17)が3番手、鈴村英喜(#9)が4番手、福村が5番手、眞野が6番手、西條が7番手、柳瀬大河(#10)が8番手に。3周目には、トップのウィルソンから4番手の鈴村までが縦に長くなりました。ウィルソンは後続をじわじわと引き離し、2番手の中島には少しずつ小川が接近。5周目には中島と小川のバトルが開始されました。
6周目、小川が中島を抜いて2番手浮上。この間に鈴村は、この2台から2秒ほど後方まで迫りました。鈴村から4秒ほど遅れて、福村と西條は5番手争い。7周目には、西條が先行しました。迎えた最終ラップの8周目、小川と中島と鈴村は僅差の2番手争い。しかしここは、小川と中島がそれぞれ順位を守りました。ウィルソンは、圧倒的な実力差を見せつけるかのように余裕の走りで、このレースでも勝利。小川が2位、中島が3位で、トップ3の順位は3ヒートすべて同じになりました。鈴村は4位、西條は5位、福村は6位でゴールしています。
●優勝 ジェイ・ウィルソン(#16)
自分自身は3ヒートで優勝。IA1では富田俊樹選手が2ヒートとも勝利を収め、チームとしては非常に素晴らしい週末になったと思います。九州は、コースサイドで多くの人が応援してくれて、とてもいいコースでした。(※最後は日本語で)アリガトウゴザイマス!
●2位 小川孝平(#17)
シーズンオフにかなりスタート練習をしてきて、ヒート1とヒート2ではその成果も見せられたので、ヒート3も……と思ったらミスしてしまいました。追い上げの展開で2位にはなれましたが、ジェイ・ウィルソン選手に絡めなかったことが残念。日本人でジェイに勝てるのは自分だけだと思っています。
●3位 中島漱也(#5)
ヒート3は、ヒート1とヒート2で課題だったスタートを決めることができたのですが、ジェイ・ウィルソン選手に喰らいつこうと思っていたら、逆にミスを連発していまいました。ヤマハが海外のトップライダーを日本に呼んでくれて感謝しています。絶対に彼の技術を盗みたいと思います。
レディース 決勝
ホールショットは小野彩葉(#4)。ディフェンディングチャンピオンの川井麻央(#1)は、スタート直後こそ7番手あたりと出遅れていましたが、すぐに追い上げ、1周目の最後に小野を抜いて先頭に立ちました。しかしすぐに小野が抜き返すと、2周目前半にも順位を入れ替える激しいトップ争いを展開。この2台から4秒ほど遅れて、久保まな(#3)が3番手をキープしました。2周目の中盤、小野を僅差で追っていた川井が転倒。これで川井は8番手まで順位を落とし、久保が2番手、楠本菜月(#5)が3番手に浮上しました。
転倒後、激しい追い上げをみせた川井でしたが、3周目にはパスしようとした穂苅愛香(#7)と接触して再び転倒。今度は11番手までポジションを落としました。トップの小野は、3周目以降にリードを拡大。2番手の久保、3番手の楠本とともに、それぞれ単独走行となっていきました。そしてレースは8周で終了。小野が独走で悲願の全日本初優勝を手にし、久保が2位、楠本が3位となりました。川井は4位まで追い上げてゴールしています。
●優勝 小野彩葉(#4)
いやあ、やっと勝ててめっちゃホッとしています。昨年は優勝するという目標を果たせず、その悔しさからシーズンオフはこれまで以上に練習を頑張ってきました。やっと結果に残すことができてとてもうれしいです。次のオフビも勝って、最終的にはチャンピオンになりたいです。
●2位 久保まな(#3)
小野選手が速すぎて、まったく追いつくことができませんでした。でも、今シーズンもこうやってレースできることに感謝しています。社会人やりながらのレース活動で、めっちゃしんどいと思うことも多いのですが、やっぱりモトクロスが好きなので続けていきたいです!
●3位 楠本菜月(#5)
昨年の最終戦も3位で、表彰台に立っているときはいつも3位。次こそ2位……を飛び越して優勝で表彰台に立ちたいです。応援してくれている方々や家族に感謝しています。
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