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全日本モトクロス選手権 第7戦 決勝レポート

2024年の全日本モトクロス選手権シリーズは、年間8戦(レディースクラスとIBオープンクラスは7戦)のスケジュール。前戦から2週間後の9月28日(土)~29日(日)に、第6戦が「TOKIO INKARAMI Super Motocross」として埼玉県のオフロードヴィレッジで開催された。

今大会には、米国のスーパークロスやモトクロスで大活躍している下田丈(#030)がスポット参戦。
2年前の近畿大会と同じく、下田は米国で戦う4スト250ccクラスではなく、450ccマシンを駆りトップカテゴリーのIA1クラスにホンダファクトリーチームから出場した。

荒川と入間川に挟まれた河川敷のフラットな土地に設けられているコースは、下田の参戦に合わせて完全リニューアル。
跳び出しが急角度のビッグジャンプ、連続ジャンプやリズムセクション、タイトターンを中心とするコーナーで構成された、よりスーパークロスコースに近いのレイアウトとなった。

今大会の全日本格式クラスは、IBオープンの予選を除いてすべて日曜日に実施された。早朝に散水代わりの雨が降り、朝のタイムアタック予選中にも小雨が降ったが、その後は曇天。
整備されたコースは前日よりはソフト傾向のベストコンディションとなった。ただし、この日の最終レースとなったIA2決勝ヒート3だけは、直前から降り始めた激しい雨により、スリッピーな路面でのレースとなった。

IA1ヒート1

ホールショットはホンダを駆る横山遥希(#41)。しかしすぐに下田丈(#030)がトップに立った。1周目は下田、横山、ヤマハファクトリーチームのジェイ・ウィルソン(#1)がトップ3。
序盤、下田は横山を一度離しかけたが、横山も喰らいつき、ウィルソンから3秒ほどのリードを奪いながら下田に接近。
3周目、翌周開催のモトクロス・オブ・ネイションズ日本代表に選ばれていた、ヤマハのマシンを駆る大城魁之輔(#5)がリズムセクションでクラッシュし、そのままリタイアとなった。

4周目以降、トップの下田はじわじわとリードを拡大し、7周目の段階で約3秒差。2番手の横山も、ウィルソンとのギャップを約3秒差に保っていたが、8周目に横山が少しタイムを落とし、翌周にはウィルソンがペースを上げたことから、両者が接近戦となった。
そして翌周、ウィルソンが横山をパス。横山は最後までウィルソンを僅差で追い続けたが、最終ラップとなった13周目に転倒し、下田、ウィルソン、横山、ガスガスを駆るビクトル・アロンソ(#33)の順でゴールした。

しかしレース後、下田と横山がレッドクロス振動区間のジャンプを跳んだペナルティにより1順位降格。これでウィルソンが優勝、下田が2位、アロンソが3位、横山が4位となった。

IA1ヒート2

ホールショットを奪ったのは再び横山遥希(#41)。しかし下田丈(#030)が格の違いを見せつけ、数台をパスして1周目のコース前半でトップに立つと、この周だけで約2秒のリードを奪った。
2番手には横山、3番手にはウィルソンがつけ、オープニングラップの通過順位はヒート1と同じ。4番手にはホンダの大倉由揮(#2)が浮上してきた。2周目、大倉はウィルソンに肉迫。
しかし翌周には、ウィルソンが2秒ほどペースを上げて大倉を約3秒引き離し、2番手の横山に迫った。

4周目、ウィルソンが横山をパスして2番手に浮上。この段階で、トップの下田は約5秒先行していた。レース中盤、横山はウィルソンについていけず、じわじわとリードが拡大。
しかし7周目からウィルソンのペースが少し落ち、横山がペースを上げたことから、8周目には両者が接近戦になった。そして9周目に入るところで、横山が先行。抜かれたウィルソンは、僅差で横山のマークを続けた。

すると11周目に、横山がまたしても転倒。これで3番手に後退し、2~3秒差で大倉が迫った。
レースは13周でチェッカーとなり、独走した下田が優勝。ウィルソンが2位、最後に大倉を振り切った横山が3位、大倉が4位となった。この結果、ウィルソンのIA1クラス2年連続、IA2クラスを含めると3年連続のシリーズタイトル獲得が決定した。

IA1ヒート3

ホールショットを奪ったのはジェイ・ウィルソン(#1)。しかしこのヒートでも、あっという間に下田丈(#030)がトップに立った。
横山遥希(#41)が3番手で、このレースもオープニングラップからトップ3は同じメンバー。
4番手にはカワサキに乗る内田篤基(#4)、5番手にはビクトル・アロンソ(#33)がつけた。2周目には、下田に2秒ほど離されながらウィルソンと横山が接近戦を繰り広げ、3周目に横山が先行。しかし翌周、ウィルソンが抜き返した。

レース中盤、下田は周回ごとにリードを拡大。一方、2番手を走るウィルソンを、横山は2~3秒後方でマークし続けた。4周目に内田を抜いて4番手に順位を上げたアロンソは、6周目まで横山を約2秒差で追っていたが、翌周からペースダウン。9周目から横山のラップタイムも落ち、これで上位勢はそれぞれ単独走行となった。

そしてレースは13周でチェッカー。下田が優勝、ウィルソンが2位、横山が3位、アロンソが4位となった。
内田は5周目に、カワサキファクトリーチームから参戦する能塚智寛(#7)の先行を許したが、その能塚は10周目に転倒。内田が5位、能塚が6位となった。

IA1コメント

●総合優勝(ヒート1/2位、ヒート2/優勝、ヒート3/優勝)

下田丈(#030)

2年ぶりに全日本参戦することができ、しかも本当に多くのファンに会場まで足を運んでもらったので、とてもうれしいです。普段はアメリカでレースしていますが、僕は日本人なので、できることなら年に一度くらいは日本のレースを走って、ファンの方々と交流したり自分の走りを楽しんでもらったりしたいと思っています。
レースのほうは、450ccのマシンに乗った経験が少なく、なおかつコースがスーパークロス寄りだったことから、少しずつ慣れながら調子を上げていくような感じ。
とはいえ、決勝ヒート2あたりからは、80~90%くらいの走りはできたと思います。これからしばらくは日本で家族や友人との時間を過ごし、11月のパリ・スーパークロスに出場し、AMAスーパークロスのインシーズンとなります。引き続き応援よろしくお願いします!

●総合2位&チャンピオン決定(ヒート1/優勝、ヒート2/2位、ヒート3/2位)

ジェイ・ウィルソン(#1)

アメリカで活躍する下田丈選手が同じクラスに参戦することを、とても楽しみにしていました。とはいえ今回は、自分のシリーズタイトル獲得決定が懸かったレースでもあったので、リスクを減らすことも意識して臨みました。
ワールドクラスの下田選手と十分なバトルができなかったことは残念ですが、現在の全日本で自分をターゲットとしているライダーたちが、さらにその先に待つ世界との差を実感するための機会にもなったと思います。
IA2とIA1で3年連続チャンピオンを獲得することができ、常にハードワークを続けてきたチームには本当に感謝しています。
同時に、いつも支えてくれるファンにも、心からお礼を伝えたいです。自分にとって日本は第2の故郷。本当にありがとう!!

●総合3位(ヒート1/4位、ヒート2/3位、ヒート3/3位)

横山遥希(#41)

決勝はすべてのヒートでスタートが良く、とくにヒート1とヒート2はホールショットでしたが、すぐ下田丈選手に先行されてしまいました。
それでもヒート1は、レース中盤まで喰らいつくことができたし、ヒート2はペースが上がらなかったり、決勝では何度か転倒したりと苦戦もしましたが、それほどネガティブになるような内容ではなかったと感じています。
下田選手と比べたらスピードは劣っていますが、そこまで大きな差ではないことも確認できました。次の週末は日本代表として2度目のモトクロス・オブ・ネイションズに出場しますが、オーストラリアでも経験を積んできたし、日本では外国人ライダーたちとバトルできるポジションにいると思っているので、自信を持って戦ってきます。

IA2ヒート1

ホールショットは田中淳也(#10)。これに柳瀬大河(#6)と西條悠人(#9)が続くと、16点差のランキング2番手で今大会を迎えた中島漱也(#3)が、西條と柳瀬をパス。
西條も柳瀬を抜き、1周目を田中、中島、西條、柳瀬、ポイントリーダーの横澤拓夢(#2)の順でクリアした。2周目には中島がトップ、横澤が3番手に。翌周以降、中島はわずかにリードを拡大していった。
3周目には西條が横澤を抜き返し、翌周には田中、西條、横澤、柳瀬が僅差の2番手争いを開始した。

5周目、田中がミスして西條が2番手浮上。徐々に後続を引き離しながら、4秒ほど先行する中島を追った。同じ5周目、横澤は柳瀬の先行を許すと、その後は少し遅れ、これにより田中と柳瀬による3番手争いに。
しかし10周目、柳瀬は転倒して10番手まで順位を下げた。これにより3番手の田中と4番手の横澤は、ほぼ単独走行状態に。一方、西條は3~4秒差でトップの中島を追い続けた。
そしてレースは12周で終了。中島が優勝、西條が2位、田中が3位、横澤が4位となった。

IA2ヒート2

ホールショットを奪ったのは、ヒート1の勝利でトップの横澤拓夢(#2)に4点差まで詰めた中島漱也(#3)。
これにスポット参戦の田中雅己(#48)、佐々木麗(#15)、浅井亮太(#7)が続いた。横澤はスタートでやや出遅れたが、すぐに3台ほどを抜いて5番手。
2周目、佐々木がポジションを下げ、浅井が3番手、横澤が4番手に順位を上げた。翌周、2番手の田中がミスしたことで中島のリードは約3秒となり、田中の背後には浅井と横澤が迫った。

4周目、田中を抜いて浅井が2番手、横澤が3番手に。この間に中島のリードは4~5秒拡大した。翌周から、浅井と横澤が僅差の2番手争いを繰り広げ、7周目に横澤が先行。
しかし抜かれた浅井は遅れることなく横澤を追撃し、さらに1~2秒差で田中も続いた。中島は約8秒のリードを築いて独走状態。11周目、2番手争いでは浅井が一度先行したが、再び横澤が抜き返した。
そしてレースは12周で終了。中島が勝利し、辛くも順位を守った横澤が2位、浅井が3位、田中が4位となった。

IA2ヒート3

スタート直前から突如として激しい雨が降り始め、これで一気にスリッピーな路面状況に。レースは西條悠人(#9)の好スタートで幕を開けたが、その西條はコースアウトを喫し、トップに立った佐野雄太(#17)を、ヒート2で中島漱也(#3)に1点逆転されてランキング2番手に後退した横澤拓夢(#2)が抜いた。
ところが先頭に立った直後に横澤が転倒。これで1周目は佐野がトップ、浅井亮太(#7)が2番手、横澤が3番手、柳瀬大河(#6)が4番手となった。

2周目には浅井がトップに浮上し、佐野はその後に後退。中島は1周目7番手と出遅れていたが、5周目には4番手まで浮上した。
6周目から、中島までの上位4台が、5番手以下を離しつつやや縦長のトップグループを形成。7周目、柳瀬は集団の最後尾となり、2秒ほど遅れた。
9周目、浅井と横澤と中島のトップ争いが白熱し、結果的に中島が2番手浮上。10周目、浅井がミスして中島が先頭に立ち、横澤が転倒して4番手に後退した。そしてレースは11周でチェッカー。
中島が優勝、浅井が2位、柳瀬が3位、横澤が4位となった。これにより、中島が横澤を13点リードして最終戦を迎える。

IA2コメント

●総合優勝(ヒート1/優勝、ヒート2/優勝、ヒート3/優勝)

中島漱也(#3)

正直なところ、3連勝できたことにまだ実感はありません。前戦とは違い今回は予選から好調で、しかも地元大会ということでリラックスでき、すべてが噛み合った状態。
とはいえこのレースはスタートで出遅れ、かなり後方からの追い上げだったので、あまり順位にこだわらず、総合優勝を獲得することを優先。
ところが、あっという間に上位勢との差が縮まり、優勝することができました。今大会は大きな自信になったし、心身ともにコンディションは良好。この状態をキープし、最終戦にすべてを出し切ります。

●総合2位(ヒート1/6位、ヒート2/3位、ヒート3/2位)

 浅井亮太(#7)

ヒート1は出遅れてしまい、しかも1周目にコースアウト。12番手あたりからのレースで、しかもあまりペースが良くない状況でしたが、最終ラップまでなんとか追い上げを続けて6位でした。
ヒート2はスタート直後から前のほうを走れたのですが、そのことで少しカラダの動きがカタく、優勝には届かず3位。それでも、ここしばらくのレースと比べたらいい内容だったと思います。
そしてヒート3は、最後に初優勝を逃すという、これまでで一番悔しいレースになりました。途中で横澤拓夢選手に先行されかけたこともあり、後続が迫っていることは分かっていましたが、ラスト2周でミスして、これまで跳べていたジャンプをクリアできず……。
本当に悔しいですが、成績そのものは上向きなので、最終戦こそ勝利につなげたいです。

●総合3位(ヒート1/4位、ヒート2/2位、ヒート3/4位)

横澤拓夢(#2

ヒート1はスタートで出遅れ、しかもサスセッティングがイマイチ決まっておらずに苦戦。ヒート2も同じく出遅れてしまいましたが、サスに関してはしっかりアジャストできたので、優勝には届かなかったとはいえ、走りは悪くありませんでした。
そしてヒート3は、ようやくスタートが決まってトップに立ったと思ったら、1周目に転倒。これで流れを悪くしてしまいました。中島漱也選手にすべてのレースで勝利され、ポイントランキングでは2番手に後退。
13点差というのは、自分が最終戦で2ヒート優勝しても、中島選手が両ヒートとも2位だと逆転できない状況です。でも、チームメイトの柳瀬大河選手とのワン・ツーになり、なおかつ自分が優勝なら逆転可能。最終戦は地元大会ですし、最後まで諦めずに戦います。

レディース 決勝

9点差のランキング2番手で今大会を迎えた川井麻央(#1)がホールショット。瀬尾柚姫(#5)と箕浦未夢(#3)が続いたが、瀬尾は5番手まで後退し、箕浦が2番手、ポイントリーダーの本田七海(#2)が3番手、トップと10点差のランキング3番手で臨んだ川上真花(#4)が4番手で1周目をクリアした。
2周目には川井と箕浦と本田が僅差のトップ争いを開始し、翌周には川上もこれに追いつき、4台のバトルとなった。

しかし4周目に入ったところで、バランスを崩した箕浦に本田が追突。箕浦は転倒し、本田はコースアウトした。このアクシデントで、箕浦はマシンが破損してリタイア。
本田は3番手でレースに復帰し、2~3秒先行する川上を追った。終盤、トップの川井に川上が肉迫。しかし最後は川井がわずかに離し、8周のレースは川井が優勝、川上が2位、本田が3位、瀬尾が4位となった。この結果、川井と本田が113点で並び、107点で川上が追う状況で最終戦を迎えることになった。

●優勝 川井麻央(#1)

じつは朝のタイムアタック予選で2回もクラッシュ。しかもけっこう激しい転倒だったし、そもそも今日はマシンと自分の走りがうまく噛み合っていないような感覚もあったので、予選の順位は悪いだろうと思っていました。
ところが終わってみたら意外にもトップタイム。これで少し流れを引き寄せ、決勝ではスタートでトップに立つことができました。
とはいえ上位勢のペースは同じくらいで、自分だけが圧倒的に速いわけではないことも分かっていたので、まずは落ち着いて走ることに集中。自分のミスで順位を落とすことだけは避けようと思っていました。
チャンピオンになるためには、ここで勝たないと後がないという状況だったので、トップを守ってゴールできたことに安心しました。これでいい流れを掴めたと思うので、このまま最終戦も勝ってシリーズタイトルを防衛します。