2025全日本モトクロス選手権 第4戦 決勝レポート

2025年の全日本モトクロス選手権シリーズは、全7戦のスケジュール。その中間地点となる第4戦中国大会が、6月14日(土)~15日(日)に広島県の世羅グリーンパーク弘楽園で開催された。
昨年は開幕前に中止が決定されたことから、このコースでの全日本開催は約2年ぶり。また全日本モトクロス選手権は、この第4戦を終えると約3ヵ月間という非常に長いサマーブレイクに入る。
瀬戸内海沿いの人気観光地としても知られる尾道の市街地から、直線距離で北西方向に約30kmの山中に設けられたコースは、自然のアップダウンを活かしたダイナミックなレイアウトが特徴。
土の中に岩盤が埋まったハード路面のコースで、左に緩くカーブするKYBラムソンジャンプを最大の名物としている。
土曜日の午前中から雨が降り、これで路面は徐々にマディコンディション化。
日曜日朝の段階でも、雨がパラつく状況だった。しかし公式練習の途中で完全に雨が止むと、すぐに陽射しが降り注いで気温も上がり、急激に路面状況がz回復。
日曜日最初のレースとなったIA2クラスのヒート1こそ、まだ土が水分を多めに含んでいたが、午後にはドライコンディションとなっていた。ただし路面には多くのワダチが刻まれ、ミスを誘発しやすい状況だった。
【IA1ヒート1】

全日本最高峰となるIA1クラスの決勝は、30分+1周の2ヒート制で実施された。
ヒート1でホールショットを奪ったのは、雨の予選でトップとなったホンダサポートの大倉由揮(#4)。これにヤマハセカンドチームの渡辺祐介(#15)、カワサキファクトリーチームの能塚智寛(#5)、カワサキに乗る神田橋瞭(#11)が続いた。1周目序盤、ワダチで神田橋が振られ、斜め後方にいたホンダの横山遥希(#2)に接触。
これで横山が転倒し、すぐ背後にいたヤマハファクトリーチームのジェイ・ウィルソン(#1)がストップするなど、10台ほどが遅れる波乱となった。ウィルソンは18番手、横山は21番手でオープニングラップをクリアした。

一方、先頭争いは大倉がけん引し、2番手には能塚が浮上。2周目には大倉が4~5秒のリードを奪い、その後は両者の膠着状態がしばらく続いた。
3番手の渡辺はトップ2についていけず、背後にはヤマハのマシンを駆る浅井亮太(#38)が接近。
3周目には浅井が3番手に順位を上げたが、この段階で2番手の能塚とは8秒ほど離れていた。4周目、渡辺が転倒。ホンダ勢の大塚豪太(#6)と小方誠(#9)に次ぐ6番手でレースに復帰した。
これにより、3番手の浅井も後続に対して6秒ほどのアドバンテージを築いた。

6周目、今度は大塚が転倒し、これで小方が4番手。トップ争いでは、この周あたりから能塚のラップタイムが少し落ち、これでトップの大倉がじわじわとギャップを拡大しはじめた。
そしてレースが終盤を迎える頃までに、大倉は7秒ほどのリードを築いた。大倉は、最後までトップを独走。レースは17周でチェッカーとなり、大倉が今季初優勝を挙げ、能塚が今季自己最高の2位となった。

レース終盤、激しさを増したのは3番手争い。4番手の小方が3番手の浅井に接近し、さらに数秒差で渡辺と大塚とヤマハセカンドチームの大城魁之輔(#8)も2台を追った。
14周目、一度は小方が先行するも、すぐに浅井が再逆転。両者のバトルはラストラップまで続いたが、最後は浅井が少しだけ離し、最高峰クラスのルーキーイヤーで初表彰台に立つ3位となった。
小方は4位でゴール。ラストは渡辺と大塚と大城の5位争いも激しく、渡辺が5位、最終ラップに逆転した大城が6位、大塚が7位となった。スタート直後のアクシデントから追い上げ、ウィルソンが8位、横山が9位となった。
●優勝 大倉由揮(#4)

優勝って、こんなにうれしいんですね! 今季開幕戦は悔しい結果となり、そこから自分の走りが徐々に良くなっているという確信はあったものの、なかなか勝利には届かずにいました。
今日は父の日。お父さんが会場まで来てくれているので、最高の親孝行ができたと思います!
●2位 能塚智寛(#5)

スタートも決まり、2番手に上がったところで「こりゃ勝てるわ……」と考えていたのですが、思っていたよりも大倉選手が速くて負けました。
ただ、あまり疲れていないので、ヒート2は勝てると思います。僕も父の日に「ありがとう」が言えるよう、頑張ります。
●3位 浅井亮太(#38)

正直、めちゃめちゃうれしいです。2位の能塚選手とはかなり差が開いて、後ろのライダーとの勝負だったのですが、サインボードで残り時間を確認しながら戦い、ラスト2周からすべてを出し切りました。
不安な気持ちで迎えたシーズンでしたが、すべてぶっ飛びました!
【IA1ヒート2】

ホールショットは大城魁之輔(#8)。これにカワサキを駆る内田篤基(#10)、ヒート1でトップ2となった大倉由揮(#4)と能塚智寛(#5)が続くと、まずは大倉が内田を抜いた。
浅井亮太(#38)も再び好スタートを決め、オープニングラップは5番手。その背後にジェイ・ウィルソン(#1)がつけたが、横山遥希(#2)はスタートで出遅れて1周目9番手からのレースとなった。
スタートからの序盤3周は、大城に大倉が肉迫するトップ争い。3周目には、3番手に順位を上げた能塚をトップ2が4秒ほど離していた。また、4番手に後退した内田には、2周目に浅井を抜いたウィルソンが迫った。

4周目、大倉のペースが突如鈍り、これで大城が3秒ほどリード。じつはこのとき大倉は、大城の飛び石を鼻に受けて負傷していた。それでも大倉は、翌周からペースを取り戻し、能塚のマークを受けながらも3~4秒先行する大城を追った。5周目、ウィルソンが内田を抜いて4番手にポジションアップ。
この段階で、3番手の能塚とは5秒ほどのギャップだった。しかし、事前テストや予選レースで転倒が相次いだウィルソンは、思うようにペースを上げることができず、ここからトップ3に少しずつ離され、背後には追い上げてきた横山が迫った。

レース中盤、トップの大城と2番手の大倉は5秒程度の間隔。大倉が出血と痛みに耐えながら粘り、一時は3番手の能塚に対して3秒ほどのリードも築いた。しかしレースが後半を迎えると、大倉がライバルたちよりも早めにペースダウン。
9周目には、大倉と能塚が再び接近した。同じ周、4番手争いでは横山がウィルソンをパス。この段階で、大倉と能塚の2番手争いとは10秒ほどの差があったものの、横山は諦めることなくさらなる追い上げを開始した。
12周目、2番手争いでは能塚が先行。その後、能塚は2~3秒のリードを奪った。

この段階で、トップの大城は8秒ほどのリードを築いて完全に独走態勢。17周目のラストラップまでライバルに隙を与えず逃げ切り、大城がヤマハにマシンをスイッチしてから初となる全日本優勝を手にした。
能塚は2位でフィニッシュ。最終ラップには3番手の大倉に横山が追いつき、両者が並んでフィニッシュジャンプを跳んだが、大倉が0.017秒差で抑えて3位、横山が4位となった。
ウィルソンは5位でチェッカー。レース終盤には3台による6番手争いが繰り広げられ、2台を抜いた小方誠(#6)が6位、内田が7位、浅井が8位となった。
●優勝 大城魁之輔(#8)

優勝ってこんなにうれしかったでしたっけ? スゴいうれしいです! 今年はYAMAHA BLU CRU RACING TEAMとして参戦。すごくいい体制でレースに臨めているのに、ここまでは成績が残せずにいました。
ヒートでの優勝ですが、まずは勝ててうれしいです。支えてくれている多くの人にお礼を言いたいです!
●2位 能塚智寛(#5)

ヒート1の表彰台で、「疲れていないから次は勝てる」と言いましたが、ちゃんと疲れて、ちゃんと2位でした。
シーズン前半の最後だったし、よく練習に来ていたコースだったし、子どもたちもYouTube観戦してくれているはずなのでいいところを見せたかったのですが……。チームと反省会します。
●3位 大倉由揮(#4)

ヒート2もスタートが決まって、いい流れだったのですが、序盤に自分のトラブルで一瞬心が折れてしまい、そこで諦めてしまったことに悔しさが残るレースでした。
でも、IA1クラスで初の総合優勝を獲得できたというのは、前向きに捉えられると思います。レベルアップして後半戦に臨みます!
【IA2ヒート1】

若手と中堅が中心のIA2クラスも、30分+1周の2ヒート制で競われた。決勝ヒート1でホールショットを奪ったのは、開幕戦以来のスポット参戦となったブライアン・シュー(#53)。
これにディフェンディングチャンピオンの中島漱也(#1)、横澤拓夢(#2)、田中淳也(#4)らが続いて1周目をクリアした。
レース序盤、世界選手権のファクトリーチームに在籍した経験も持つシューは、ハイペースで周回。2番手の中島と比べても1周につき1~2秒速く、徐々にリードを拡大していった。

3番手の横澤以下は、中島よりもさらに2秒ほどペースが遅く、4周目の段階で2番手の中島と3番手の横澤は10秒ほどのギャップとなった。田中は、5周目まで横澤を僅差でマーク。
しかし6周目に少しミスし、これで両者の間隔が2~3秒に拡大した。5番手以下はさらに大きく遅れ、その先頭を守る鴨田翔(#6)に、森優介(#16)や吉田琉雲(#14)、さらに柳瀬大河(#5)が近づいてきた。

レース中盤、シューは中島を7秒ほど離してトップを独走していたが、9周目に転倒。この際にマシンが破損して復帰に1分ほど時間を要し、9番手まで順位を下げた。これにより、突如として中島が単独走行のトップに。
2番手の横澤はこの段階で16秒ほど後方で、そのまま危なげなく16周を走破した中島が、今季5勝目を挙げた。

2番手争いでは、一度は横澤から5秒ほど遅れた田中が、レース後半になってペースを取り戻し、逆に横澤は少しペースダウン。
これで両者の間隔が3周ほどで縮まり、12周目から再び接近戦となった。そして14周目に田中が先行。
そのまま突き放した田中が2位、横澤が3位となった。後方の順位争いでは鴨田が脱落し、10周目に森をパスした吉田が逃げ切って4位。
残り2周で森を抜いた柳瀬が、シューよりも速いベストラップタイムを最終ラップに叩き出し、同じく15周目に森をパスしたシューを振り切って5位となった。
●優勝 中島漱也(#1)

天気も悪くてまだグチャグチャなのですが、たくさんのお客様に会場で応援していただき、とても感謝しています。
まずは1本目、勝てました。でもここにはピンピンを獲りに来ているので、ヒート2も優勝できるように頑張ります。チームやサポートしてくださっている方々に感謝しています。
●2位 田中淳也(#4)

関西からも近く、会場まで応援に来てくださった方々も多いので、1位ではなく2位とはいえ、とりあえずみんなの前で表彰台に立てたことはうれしいです。
とはいえ悔しいので、ヒート2はまたブライアン・シュー選手も速いと思いますが、いいレースをしたいです。
●3位 横澤拓夢(#2)

2年ぶりにこのコースでレースができて本当にうれしいです。今回、リヤはこれまでと同じくブリヂストンでしたが、フロントにピレリを履きました。
ブリヂストンが撤退してタイヤを買うお金がないので、ピレリジャパンさん、もしよかったらサポートよろしくお願いします。
【IA2ヒート2】

中島漱也(#1)がホールショット。これに続いた鴨田翔(#6)をすぐに田中淳也(#4)が抜いた。
4番手につけたのは佐野雄太(#11)。ブライアン・シュー(#53)は出遅れ、混戦の中で積極的に順位を上げるも、オープニングラップはトップの中島から約8.5秒遅れの9番手だった。
2周目、シューは6番手までポジションアップ。この間に、中島からシューまでは約9.7秒差にギャップが拡大した。

しかし3周目に、シューはスポット参戦の勝谷武史(#55)や佐野をパスして4番手まで順位を上げ、3番手の鴨田をマーク。鴨田も粘り4周目こそポジションを守ったが、5周目にシューが先行した。
この段階で、トップの中島と2番手の田中は約2秒、田中と3番手のシューは約3秒の間隔。4番手に後退した鴨田はやや遅れ、トップ争いは3台に絞られた。
6周目、シューは田中の背後に迫り、翌周には逆転。ベストラップタイムが日本人勢より2秒ほど速いシューは、続いて中島の背中を捉え、8周目に逆転してトップに立った。

ヒート1に続き、シューは後続を引き離しながらトップを快走。このヒートでは最後まで大きなミスをすることはなく、17周のラストラップまで危なげなく走破して、今季3勝目を挙げた。
レース終盤、2番手の中島、3番手の田中、4番手の鴨田はそれぞれ単独走行に。そのまま最後まで順位は変わらず、中島が2位、田中が3位、鴨田が4位でチェッカーを受けた。

一方、レース終盤になっても混戦が続いたのは5番手争い。8周目の段階では佐野が5番手で、その3秒ほど後方で勝谷、池田凌(#13)、柳瀬大河(#5)、横澤が接近戦を繰り広げていたが、10周目に横澤が一気に6番手まで浮上すると、ここから佐野との距離を詰めていった。
そして15周目に、横澤が逆転成功。佐野も最後まで諦めることなく再逆転を狙ったが、横澤が振り切って5位、佐野が6位となった。
●優勝 ブライアン・シュー(#53)

コースは、ハイスピードでテクニカル。チャレンジングな設定で、ここで全日本を戦うのは初めてでしたが、とても好きになりました。
ヒート1は不運がありましたが、ヒート2は優勝できてうれしいです。応援してくれている日本のファンにも感謝しています。また参戦します!
●2位 中島漱也(#1)

ホールショットが決まり、そこから逃げ切るつもりでいたのですが、負けちゃいました。まだまだ世界の壁はデカいので、自分ができることを精一杯やっていきます。
次戦までインターバルが長いですが、その間にもっと強く、速くなれるよう頑張ります!
●3位 田中淳也(#4)

ヒート1と同じような位置からのレースで、すぐに2番手までは浮上できましたが、その後は離されるばかり。後ろからはブライアン・シュー選手も来て、一瞬でしたが勉強できました。
次戦は3ヵ月後ですが、地元での大会。一番高いところに立てるよう努力します。
【レディース 決勝】

15分+1周の決勝レースは、箕浦未夢(#6)のホールショットで幕を開けた。これに続いたのは、前戦で全日本初表彰台に上がった大久保梨子(#12)や、スポット参戦の神田橋芽(#35)、開幕からここまで全勝中の川井麻央(#1)。
すぐに川井が2番手に浮上すると、トップの箕浦を追った。しかし1周目終盤のジャンプ着地で川井がバランスを崩し、オープニングラップは箕浦が制し、2~3秒遅れて川井が2番手となった。

2周目、3番手の大久保はトップ2から完全に遅れて単独走行となり、早くも箕浦と川井のマッチレースに。川井は箕浦との距離を詰めると、僅差でのマークを開始した。

そして4周目に川井がトップ浮上。翌周以降、川井は箕浦を引き離した。これにより、トップの川井、2番手の箕浦はいずれも単独走行に。レースは9周でチェッカーとなり、川井が優勝、箕浦が2位となった。

一方、3番手の大久保もレース中盤まで単独走行を続けていたが、穗苅愛香(#8)の転倒に巻き込まれて1周目8番手と出遅れていた楠本菜月(#4)が、4周目に4番手まで順位を上げ、10秒ほどあった大久保のリードを徐々に削っていった。

そして最後は、大久保と楠本が表彰台登壇をかけた接近戦を展開。最終ラップにベストラップをマークした大久保が僅差で逃げ切って3位、楠本が4位となった。
5位は、こちらも1周目10番手と出遅れていた赤松樹愛(#8)。穗苅は6位でチェッカーを受けた。
●優勝 川井麻央(#1)

ここで勝たないと、東福寺さん(※大会1週間前に逝去された、T.E.SPORT監督で全日本V9の東福寺保雄氏)が喜んでくれないと思い、辛かったけどしっかり戦いました。
優勝して、東福寺さんが現役時代に使っていたジャージを着て表彰台に立つことができました。シーズン後半戦も、東福寺さんのために、チームのみんなと頑張っていきます!
●2位 箕浦未夢(#6)

川井選手、優勝おめでとうございます。今回こそ川井選手に勝って、いい流れでインターバルを迎えたかったのですが、やっぱり川井選手は速かったです。
長い夏休みの間にしっかり練習して、今度こそ優勝したいです。
●3位 大久保梨子(#12)

スタートから前にいられて、途中までは単独走行で3番手だったのですが、レース終盤は後ろの選手に迫られ、体力のなさを実感しました。この結果に満足せず、インターバルにしっかり練習したいと思います。