2025全日本モトクロス選手権 第7戦 決勝レポート

全日本モトクロス選手権はシリーズは、2025年も宮城県のスポーツランドSUGOでフィナーレを迎え、第7戦「第63回MFJ-GPモトクロス大会」が11月1日(土)~2日(日)に開催された。
今季はポイントスケールが変更され、全体としては1順位による獲得点数の差が減ったことなどから、全日本格式のクラスはいずれもこの最終戦でチャンピオンが決定することに。
また最高峰のIA1クラスには、カワサキファクトリーチームから今年の世界選手権MXGPを制したフランスのロマン・フェーブル(#3)、ホンダファクトリーチームからは世界選手権MX2を2025年のルーキーとして戦ったイタリアのバレリオ・ラタ(#118)がスポット参戦して話題を集めた。
今季第2戦でも使用されたコースは、山の斜面と丘にまたがるようにレイアウトされており、アップ&ダウンが豊富。金曜日午後から天候が大荒れとなり、各クラスの予選などが実施された土曜日は一部区間がショートカットされたが、朝からの陽射しと強風で一気に路面状況は改善した。
日曜日も晴れ時々曇りで、決勝はフルコースで実施。前日に使用しなかった一部区間にぬかるみが残り、水分を多く含んだ路面には深くカタいワダチが刻まれたが、基本的にはドライのベストコンディションだった。
【IA1ヒート1】

全日本最高峰となるIA1クラスの決勝は、25分+1周の2ヒート制。前戦に続き、ホンダの横山遥希(#2)とカワサキファクトリーチームの能塚智寛(#5)は、ケガにより欠場した。
ヤマハファクトリーチームのジェイ・ウィルソン(#1)が、ホンダの大倉由揮(#4)を36点リードして臨んだ決勝ヒート1は、カワサキファクトリーチームからスポット参戦したモトクロス世界選手権MXGPチャンピオンのロマン・フェーブル(#3)が、ホールショットを奪った。

これに続いたヤマハセカンドチームの大城魁之輔(#8)を抜き、ホンダファクトリーチームから世界選手権MX2に参戦するバレリオ・ラタ(#118)が2番手、ウィルソンが3番手にポジションアップ。

大倉が大城に次ぐ5番手という1周目のオーダーとなった。2周目、ラタはトップのフェーブルを追走。ラタとウィルソンと大城と大倉のギャップは、いずれも4~5秒に拡大し、大倉の背後にはカワサキ勢の内田篤基(#10)と安原志(#7)と西條悠人(#37)が迫った。

3周目にはラタもフェーブルから数秒遅れはじめ、翌周には2~5番手のギャップもそれぞれさらに拡大。この段階で、ウィルソンは約6.5秒差で2番手のラタを追っていたが、5周目にクラッシュしてリタイアとなった。これにより3番手には大城が上がったものの、ラタからはすでに約19秒遅れ。この周、4台による4番手争いの集団では、大倉に代わり安原が先頭に立ったが、こちらは3番手の大城から10秒近いビハインドとなった。
レース後半、上位4台はそれぞれ単独走行に。

一方、5番手の安原には2秒前後の差で内田が迫るも、安原が逆転のチャンスを与えなかった。そしてレースは14周で終了。フェーブルが優勝、ラタが2位、大城が3位、西條が4位、安原が5位、内田が6位となった。大倉はペースが上がらず8位でフィニッシュ。
それでも、ウィルソンがノーポイントに終わったことから、10ポイントまでギャップを縮めてヒート2に臨むことになった。
●優勝 ロマン・フェーブル(#3)

スポーツランドSUGOは、とてもいいコースですね。ここまで来るのはかなり遠かったですが……。
今日はかなりいいコンディションになりましたが、同時にとてもチャレンジングな路面状況となり、トレーニングにも最高です。そしてレースでも勝ててハッピーです!
●2位 バレリオ・ラタ(#118)

コースはバンピーかつスリッピーで非常に難しかったのですが、レースは楽しめました。
ロマン・フェーブル選手をフォローしようと頑張ったのですが、やっぱり世界チャンピオンは速かったです。でも、次のレースも頑張ります!
●3位 大城魁之輔(#8)

優勝できなかったので「悔しい」と言いたいところではあるのですが、これまでに獲得した3位の中で一番うれしい3位。
とはいえ世界選手権ライダーたちはあまりにも速すぎて見えなかったので、ヒート2はもっと勉強できる位置でレースして、多くのことを吸収したいです。
【IA1ヒート2】

ヒート1でクラッシュしたジェイ・ウィルソン(#1)は、ケガによりヒート2を欠場。これにより大倉由揮(#4)は、23位以内でゴールすれば逆転でシリーズタイトルを獲得できることになった。
レースは、再びロマン・フェーブル(#3)のホールショットで幕を開け、これに大城魁之輔(#8)とバレリオ・ラタ(#118)が続くと、オープニングラップで大城とラタが順位を入れ替え、最初からヒート1の結果と同じトップ3の並びとなった。

コースの随所に深くてカタいレールが刻まれ、ヒート1にも増して難しい路面状況。この中、フェーブルは世界選手権の若手ライダーに対しても序盤からハイペースでアドバンテージを築き、スタートから5周で約16秒のリードを奪った。
この段階で、3番手の大城は2番手のラタから約8秒遅れ。また4番手には、3周目に大倉をパスして西條悠人(#37)が浮上してきたが、こちらも5周目の段階で大城から約8秒遅れとなっていた。

大倉は西條に大きく引き離され、その4秒ほど後方には安原志(#7)が接近。しかしその安原が6周目にミスして7番手にポジションを下げ、これで内田篤基(#10)が大倉と約6秒差の6番手となった。

レース後半、トップ4がそれぞれ単独走行を続ける一方、大倉と内田は接戦となり、9周目に内田が逆転に成功。ところが11周目に内田が転倒し、大倉が5番手に返り咲き、内田は安原に次ぐ7番手まで順位を下げた。
そしてレースは、再び14周でチェッカー。フェーブルが優勝、ラタが2位、大城が3位、西條が4位と、ここまではヒート1とまったく同じ順位となった。また、大倉が5位、安原が6位、内田が7位でチェッカーを受けた。
この結果、最高峰クラスに挑戦を始めてから4年目で、大倉が初めてシリーズタイトルを獲得。ホンダにとっては2021年の山本鯨以来となる最高峰クラス制覇で、ヤマハは確実視されていた4年連続チャンピオンを逃した。
●優勝 ロマン・フェーブル(#3)

ヨーロッパからは遠いけど、日本でカワサキとさまざまなテストができて、スポーツランドSUGOでは2レースとも勝つことができ、とても満足しています。
ヨーロッパでレースをするのが、今からとても楽しみです。
●2位 バレリオ・ラタ(#118)

ロマン・フェーブル選手とレースできたことを誇りに思います。初めての日本、初めてのスポーツランドSUGOで、楽しくライディングできました。
日本のファンに感謝します。また来年、日本でお会いしましょう!
●3位 大城魁之輔(#8)

いいシーズンの締めになったとは思いますが、トップ2が見える位置でのレースは……。チャンピオンという目標には届きませんでしたが、良かったところもいっぱいあったシーズンでした。来年に向けて、もっともっと速くなろうと強く思いました!
●チャンピオン 大倉由揮(#4)

チャンピオンになった実感はまるで湧いていません。ホンダに移籍し、IA1にステップアップして4年目。
なかなかうまくいかないシーズンが続いてきたので、皆さんのおかげで獲得できたシリーズタイトルだと思っているし、感謝の気持ちでいっぱいです!
【IA2ヒート1】

IA2クラスの決勝も、IA1と同じく25分+1周の2ヒート制で競われた。このクラスは、中島漱也(#1)が47点リードのランキングトップで今大会を迎え、ヒート1でランキング2番手の田中淳也(#4)が優勝した場合でも、中島は5位以内に入れば連覇決定という状況だった。
迎えたヒート1、ホールショットを奪ったのは中島。これにブライアン・シュー(#53)が続くと、1周目だけで3番手以下を4秒ほど離しながら接近戦を展開した。

そしてシューがトップでオープニングラップをクリア。中島が2番手で、3番手には田中が浮上してきた。
2周目、田中の背後には吉田琉雲(#14)が接近。翌周、吉田はまず田中をパスすると、続いて中島の攻略にも成功し、一気に2番手まで順位を上げた。
この間に、トップのシューはリードを約9秒に拡大。4周目以降、シューと吉田のギャップは大きく変化しなくなったが、それでもじわじわと拡大傾向にあり、7周目には約12秒差となった。

一方、吉田に数秒離された中島と田中には、1周目8番手から追い上げてきた横澤拓夢(#2)が接近。5周目に田中、6周目に中島を抜いて、横澤が3番手に順位を上げた。
その後、田中が遅れていったのに対し、中島は横澤を僅差でマーク。
すると今度は、1周目9番手から追い上げてきた柳瀬大河(#5)が迫り、8周目には三つ巴の3番手争いが開始された。そして9周目に、柳瀬が中島をパス。翌周、柳瀬と中島が次々に横澤を抜いた。

11周目、横澤は渡辺陵(#10)にも抜かれて6番手に後退。中島は柳瀬から遅れることなく続き、ラストラップとなった13周目にはすぐ背後で突入したが、最後は柳瀬が振り切った。
そしてレースはシューが優勝、吉田が2位、柳瀬が3位、中島が4位、渡辺が5位、横澤が6位、田中が7位。これにより、中島の2年連続チャンピオンが決まった。
●優勝 ブライアン・シュー(#53)

トラックコンディションは良好、自分の走りもいいフィーリング。しっかり準備をして、ヒート2でも同じようにやって勝ちます!
●2位 吉田琉雲(#14)

やっぱりシュー選手は速いですね。マシントラブルにより、結果がどうなるかわからないですが(※マフラー破損により、表彰式の段階では再車検合格が危ぶまれた)、ヒート2でも表彰台に戻ってきます!
●3位 柳瀬大河(#5)

とてもタフなレースでしたが、とても好調だったことに加え、チームの地元ということでたくさんの応援があり、そのおかげで3位まで追い上げることができました!
【IA2ヒート2】
横澤拓夢(#2)がホールショット。これにチャンピオンヘルメットでレースに臨んだ中島漱也(#1)、ヒート1で2位表彰台の吉田琉雲(#14)が続くと、まずは中島が先頭に立った。
ヒート1で勝利したブライアン・シュー(#53)は大きく出遅れ、1周目のコース中盤でもまだ9番手。それでも、ここからさらに3ポジションアップして、6番手でオープニングラップをクリアした。
2周目、トップの中島はリードを約3秒に拡大した。

3周目、前の周に鴨田翔(#6)をパスして5番手に順位を上げていたシューが、吉田と田中淳也(#4)の3番手争いに接近。
翌周、シューは田中をパスし、この3台が横澤との距離を詰めたことで、4台による2番手争いとなった。5周目にはここから田中が遅れはじめ、吉田はシューを抑えつつ横澤に肉迫。
3台のバトルは6周目も同じ順位で続いたが、7周目にシューが2台をパスして2番手に順位を上げ、吉田も横澤を抜いた。

後続がバトルを展開する間に、トップの中島はリードを拡大。シューが2番手にポジションアップした段階で、8秒近いアドバンテージを築き上げた。
8周目、シューの追い上げによりこのギャップは約6秒に縮まったが、翌周にシューが転倒して3番手に後退。
これで2番手となった吉田は、トップの中島から10秒ほど遅れていた。

ラスト3周となった11周目、今度は吉田が転倒し、2番手に返り咲いたシューと約4秒差となる3番手に後退。吉田の2秒後方には横澤が迫った。

しかし上位勢にこれ以上の順位変動はなく、レースは中島が自身のシリーズタイトル防衛に花を添える今季8勝目をゲット。シューが2位、吉田が3位で表彰台に登壇し、横澤は4位となった。

レース終盤には田中の背後に渡辺陵(#10)が迫るも、最後まで田中が順位を守り、田中が5位、渡辺が6位。
シリーズランキングでは、中島がチャンピオン、田中がランキング2位、鴨田が3位、横澤が4位、吉田が5位となった。
●優勝 中島漱也(#1)

ヒート1は、これまでにないほど緊張。ふがいない走りで、表彰台に立つことすらできませんでした。
1年間応援してくださった方々に、感謝の気持ちを伝えることさえできなかったので、ヒート2は絶対に勝つと誓って臨みました。チャンピオンは、自分だけの力じゃないです!
●2位 ブライアン・シュー(#53)

ベストは尽くしたのですが、難しいコースコンディションでいくつものミスを喫し、これで多くの時間を使ってしまいました。
来年のレース参戦に関してはまったく未定。とりあえず、明日イタリアに戻ります。
●3位 吉田琉雲(#14)

途中で転倒してしまい、後ろが近づいてきて焦っていましたが、なんとか表彰台圏内を守ってゴールできたので良かったです。
来シーズンは、もっと上を目指して頑張るので、引き続き応援よろしくお願いします!
●チャンピオン 中島漱也(#1)
初めてディフェンディングチャンピオンとして臨んだシーズンで、昨年とはまた違う難しさがあったのですが、このタイトルを獲得するためにレースをしてきたので、すべてが報われた気持ちです。

【レディース 決勝】

15分+1周の決勝レースは、スタート直後から楠本菜月(#4)、川上真花(#3)、穗苅愛香(#8)、川井麻央(#1)、箕浦未夢(#6)の5台が激戦を繰り広げ、一度は川上が先頭に立ったがミスにより後退。
穗苅が1周目を制した。しかし2周目には川井がトップに。3~4秒遅れて川上と箕浦と穗苅が2番手争いを展開し、5番手に後退した楠本は大きく遅れた。
3周目に入るフィニッシュジャンプで、箕浦が川上に追突して転倒。これで箕浦は5番手に後退した。

4周目、穗苅もミスで大きく遅れ、トップの川井を川上が約4.5秒差で追う状況に。ここから川上が距離を詰め、6周目には完全に接近戦となった。

川井はポジションを守り続けたが、最終ラップとなった8周目の後半で川上が逆転。そのまま逃げ切った川上が、今季初優勝を挙げた。

川井はシーズン全勝を逃したが、2位でゴールして3年連続5度目のシリーズタイトル獲得を決定。
レース後半に再び楠本を引き離した穗苅が、今季3度目の表彰台登壇となる3位を獲得した。
上位勢から大きく引き離されながらも、後続に対して十分なマージンを持ち続けて単独走行を続けた楠本が4位。
転倒後の箕浦は、さまざまなダメージからペースが上げらず、1周目11番手から追い上げた大久保梨子(#12)が5位、レース終盤に山崎琴乃(#9)や大久保と三つ巴の5番手争いを繰り広げた木村綾希(#13)が6位となった。
箕浦は9位に終わったが、シリーズランキングでは3位の大久保と2点差で2位を守った。
●優勝 川上真花(#3)

1周目でトップに立ったのに、ミスで何台もに抜かれ、トップに離されたのですが、お兄ちゃんから「最後まで諦めるな!」と言われてきたので、最後まで走り切って勝つことができました。
いろんな方々に支えていただき優勝できました。ありがとうございます!
●2位 川井麻央(#1)

前戦のフリープラクティスでクラッシュして、カラダのダメージが大きかったことから、大会前は一度もバイクに乗ることができず、土曜日がリハビリのような状態。日曜日もその影響を感じました。
自分がずっと前を走っていたことで、ラインを読まれたのも敗因ですが、チャンピオンになれたので良かったです。
●3位 穗苅愛香(#8)

いつもめっちゃスタートが下手クソなんですが、1周目トップで帰ってこられて、これで頭が真っ白に。
結局、お父さんのサインボードは1周も見られませんでした。1位と2位の“マナカ選手”とは大きく離されてしまったので、来シーズンに向けて乗り込みます!
●チャンピオン 川井麻央(#1)

これまでシリーズタイトルを何度も手にしてきましたが、その中でも今年はいろいろありました。自分には東福寺さん(※今年6月に逝去されたチーム創設者&監督の東福寺保雄さん)の姿は見えないのですが、東福寺さんは私を見てくれていると思うので、チャンピオンを捧げられて良かったです。
























