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全日本モトクロス選手権 第8戦(最終戦) 決勝レポート

年間8戦(レディースクラスとIBオープンクラスは7戦)で競われてきた2024年の全日本モトクロス選手権シリーズは、いよいよシーズン最終戦を迎え、第62回MFJ-GPモトクロス大会が10月19日(土)~20日(日)に宮城県のスポーツランドSUGOで開催された。

今大会には、前戦ですでにジェイ・ウィルソン(#1)の連覇が決定している最高峰のIA1クラスに、世界選手権ライダーのフェルッチョ・ザンキ(#73)がスポット参戦。450ccマシンでのレースは今回が初めてというイタリア出身の18歳が、どんな走りをみせるのかにも注目が集まった。
また、IA2クラスは中島漱也(#3)と横澤拓夢(#2)が13点差、レディースクラスは川井麻央(#1)と本田七海(#2)が同点でこの最終戦に臨むことになり、両クラスのし烈なチャンピオン争いも大きな見どころとなった。

今季第4戦でも使用されたコースは、山の斜面と丘にまたがるようにレイアウトされ、名物となっている上り急こう配の「大坂」をはじめ、アップ&ダウンに富むのも特徴。
今大会では、基本的なレイアウトを踏襲しながら、ジャンプやリズムセクションの仕様などが大幅に見直された。予選前日の金曜日や、土曜日の夜に降雨があったが、路面に与えた影響は少なく、日曜日のコースは朝からベストコンディション。
粘土質の路面は少し柔らかくなり、各クラスの走行により深いワダチが刻まれていった。そして午後になると急激に乾き、かなりの土ボコリが舞う状況。かなりのハードパックと化した。
日曜日の天候は晴れ時々曇り。朝はかなり冷え込み、最高気温は16℃だった。

IA1ヒート1

全日本最高峰となるIA1クラスの決勝は、25分+1周の2ヒート制で実施された。そのヒート1では、ホンダサポートの横山遥希(#41)がホールショット。
カワサキに乗る内田篤基(#4)をパスして、ホンダの大倉由揮(#2)が2番手に順位を上げた。内田の後方には、ヤマハファクトリーチームから参戦するIA1連覇のジェイ・ウィルソン(#1)。スポット参戦したホンダファクトリーチームのフェルッチョ・ザンキ(#73)はスタートで出遅れ、1周目は9番手だった。
2周目、ウィルソンが内田をパス。内田の背後には、ガスガスを駆るビクトル・アロンソ(#33)とザンキが迫った。

ウィルソンは、3周目に大倉の攻略にも成功。内田は6番手に後退し、これで横山を先頭にウィルソン、大倉、アロンソ、ザンキのトップ5となった。この段階で横山は3秒ほど先行していたが、翌周からウィルソンが少しずつ距離を詰めた。4周目にアロンソとザンキが大倉を抜き、5周目にはウィルソンが横山をパスしてトップに浮上。
アロンソとザンキのバトルでアロンソが転倒して5番手となった。6周目、ザンキが横山とウィルソンを次々にパスしてトップ。同じ周、アロンソは大倉を抜いて4番手に順位を回復した。出遅れながらもレース中盤で先頭に立ったザンキは、ここから一気にリードを拡大。独走態勢を築いていった。

2番手争いでは、ウィルソンが一度は3秒ほどのリードを築いたが、8周目あたりからラップタイムが落ち始め、同じタイミングで横山がペースアップ。これにより9周目から接近戦となり、翌周には横山が2番手に順位を上げた。さらに、抜かれたウィルソンの背後にはアロンソが接近。11周目にはアロンソが先行した。その後、ウィルソンは完全に遅れて4番手単独走行に。一方、アロンソは横山を追ったが、横山が3秒ほどのリードを守った。
そしてレースは14周でチェッカー。ザンキが優勝、横山が2位、アロンソが3位、ウィルソンが4位、レース終盤にカワサキファクトリーチームから参戦する能塚智寛(#7)の接近を許しながらも大倉が5位、能塚が6位となった。

●優勝  フェルッチョ・ザンキ(#73)

アリガトウ。皆さんのサポートに感謝しています。スタートに失敗して出遅れてしまいましたが、そこからはリズム良く乗ることができ、前にいたライダーたちをパスして優勝できたので、まずは満足しています。

●2位  横山遥希(#41)

ホールショットでしたが、後ろから来たジェイさんとザンキ選手のペースが速く、抜かれてしまいました。ついていこうと思ったのですが、ザンキ選手には離されてしまいました。
何とも言えない、うれしくないレース。次はちょっとでもザンキ選手についていき、チャンスを掴みたいです。

●3位  ビクトル・アロンソ(#33)

アリガトウゴザイマシタ。でも、あまり満足できるレースではなかったですね。
コースはとてもタフでアームパンプにもなったし、クラッシュも喫してしまったし……。でも、世界選手権ライダーのザンキ選手と日本で戦えることはうれしく思っています。

IA1ヒート2

今大会の2週間前にイギリスで開催された国別対抗戦のモトクロス・オブ・ネイションズでクラッシュし、そのケガが完治していない状態で今大会に臨んだ大倉由揮(#2)は、身体の状態やポイントランキングの前後点差などを考慮して、このレースの欠場を決めた。
スタートでは横山遥希(#41)が再び真っ先に1コーナーへと進入したが、ターンする際にやや失速。これをかすめてジェイ・ウィルソン(#1)が先頭に立った。横山が2番手、ビクトル・アロンソ(#33)が3番手、内田篤基(#4)が4番手、フェルッチョ・ザンキ(#73)が5番手で1コーナーをクリア。
一方、能塚智寛(#7)ら4台が、クラッシュにより大きく遅れた。

1周目、内田は5番手に後退。ウィルソンと横山とアロンソとザンキが、早くも内田を離しながらトップグループを形成した。2周目には、この4台が1秒程度の間隔で続き、内田は約6秒のビハインド。その背後にはホンダのマシンを駆る大塚豪太(#6)が迫った。3周目、集団の中でトップのウィルソンを僅差で追っていた横山が、ジャンプで転倒。身体を強く打ちつけた横山は、そのままリタイアとなった。
4周目、4番手争いでは大塚が内田をパス。この2台から7秒ほど遅れてヤマハファクトリーチームの渡辺祐介(#12)、さらに7秒ほど離れて能塚が、それぞれ単独走行で続いた。
6~7周目にかけ、トップグループではアロンソがトップのウィルソンに肉迫。プレッシャーをかけ続けた。

そして8周目に入ったところで、アロンソがウィルソンをパス。するとここでザンキも動き、ウィルソンとアロンソを次々にパスして先頭に立った。その後、ザンキは一気にリードを拡大。遅れたアロンソをウィルソンが追い続けたが、レース終盤になってアロンソが少しのアドバンテージを得た。


この2台から大きく遅れながらも4番手を守る大塚には、9周目に渡辺を抜いた能塚が接近。ラスト2周となった13周目には、能塚が射程圏内に捉えた。そしてラストラップで能塚が仕掛けたが、能塚は転倒。
レースはザンキが再び優勝し、アロンソが2位、ウィルソンが3位、大塚が4位、能塚が5位、渡辺が6位となった。

●優勝  フェルッチョ・ザンキ(#73)

カッタ、ウレシイ、コノキカイヲクレタ、ホンダニ、カンシャ! 来年も世界選手権のMX2クラスに参戦します。毎戦トップ5圏内でのゴールを目標に、最終的にはチャンピオンを目指して戦います。応援よろしくお願いします!

●2位  ビクトル・アロンソ(#33)

アリガトウゴザイマシタ。とてもいいシーズンを過ごすことができました。サポートしてくれた家族にとても感謝しています。450ccクラスで初めて戦うシーズンでしたが、表彰台にも立つことができ、満足しています。

●3位  ジェイ・ウィルソン(#1)

ミナサン、キョウモ、マンズドウモネ(※仙台弁で「本当にどうもありがとう」の意味)。イツモ、オウエンアリガトウ。
コトシノレースハ、トテモタイヘンデシタ。ニホンノライダーハ、トテモハヤクナリマシタ。ライネンモ、ガンバリマス。オウエンヨロシクオネガイシマス!

IA2ヒート1

若手と中堅が中心のIA2クラスは、25分+1周の2ヒート制で競われた。中島漱也(#3)がポイントリーダー、横澤拓夢(#2)が13点差のランキング2番手で迎えたヒート1、両者の明暗はスタート直後で早くも分かれ、中島がホールショットを決めたのに対し、横澤は大混戦となったスタートからふたつめのコーナーで転倒し、最下位からの追い上げを強いられた。
1周目をトップでクリアしたのは中島。これに西條悠人(#9)や田中淳也(#10)、浅井亮太(#7)らが続いた。横澤は、19番手まで順位を回復。2周目、ランキング3番手として臨んだ柳瀬大河(#6)がクラッシュし、そのままリタイアとなった。

レース序盤、トップの中島から4番手の浅井まではそれぞれ2~3秒間隔。4周目には渡辺陵(#12)が5番手に浮上し、この段階では前と8秒ほど離れていたが、渡辺がここからやや距離を詰めていった。
レース中盤、上位勢の中で西條が、3番手の田中を少し離しつつトップの中島に接近。8周目あたりから、周回ごとに増減はあるものの1~2秒のギャップとなった。
一方、横澤は6周目に8番手まで順位を上げたが、ここで追い上げの勢いが止まった。10周目、トップ2から7~8秒ほど遅れた3番手の田中淳也をマークしていた浅井が転倒し、5番手に後退。代わりに渡辺が4番手となった。

横澤は、10周目にようやく7番手にひとつ順位を上げたが、翌周にミスして12番手。依然としてトップ争いは中島を西條が追う状況だったが、仮に西條の先行を許したとしても、このままの順位なら中島のシリーズタイトル獲得が決まる状況となった。そして12周目には、西條が中島に肉迫。
しかし最後まで中島がポジションを守り、14周のレースで勝利を収めた。西條が2位、トップ2からは15秒ほど遅れたが田中が3位。渡辺が4位、浅井が5位でゴールした。横澤は11位に終わり、これで中島のIAクラス初タイトル獲得が決まった。

●優勝&チャンピオン  中島漱也(#3)

シーズン前に、このままではダメだと思って、いろんな人に協力してもらいないがら自分を変えるための努力をしてきたので、支えてくれた方々に結果で恩返しができて、本当に良かったです。自分の力だけでは、このタイトルは獲得できていません。感謝の気持ちでいっぱいです。

●2位  西條悠人(#9)

予選からとても調子が良く、優勝するつもりでレースに臨みましたが、漱也君が速くて、なかなか抜けないうちに終わってしまいました。次もスタートを決めて、次こそ絶対に勝ちます!

●3位  田中淳也(#10)

ここまでまだ優勝したことがなく、この最終戦こそと思ってヒート1に臨みましたが、前の2台は離れていくばかりでした。ヒート2は走りを改善して、チャンピオンライダーとバトルができるように頑張ります。

IA2ヒート2

ホールショットの鴨田翔(#4)を抜いて、阿久根芳仁(#13)がトップに浮上。さらに田中淳也(#10)と新チャンピオンの中島漱也(#3)が続き、鴨田は4番手、浅井亮太(#7)が5番手、西條悠人(#9)は6番手でオープニングラップをクリアした。
2周目、阿久根を抜いて田中がトップ、中島が2番手にポジションアップ。浅井はふたつ順位を落として渡辺陵(#12)に次ぐ7番手まで順位を下げ、その後方には横澤拓夢(#2)が上がってきた。また、西條は鴨田を抜いた。

翌周、鴨田は8番手までダウン。この段階で、トップの田中を1~2秒差で中島が追い、4秒ほど遅れて阿久根と西條がセカンドグループ、さらに3秒ほど離れて渡辺と横澤と浅井と鴨田のサードグループとなった。4周目には、サードグループから浅井と鴨田が遅れ、5番手争いは渡辺と横澤の2台に。
5周目には横澤が先行した。同じ周、トップ争いでは中島が田中の攻略に成功。しかし田中も譲らず、6周目に入ったところですぐに再逆転した。7周目、渡辺がマシントラブルでリタイア。この周、中島は再び田中をパスし、3番手争いでは西條が先行し、抜かれた阿久根の背後には横澤が迫った。

再びトップに立った中島は、8周目以降にリードを拡大。2番手となった田中の背後には、ハイペースで西條が近づいていった。そして10周目に、西條が2番手浮上。この段階で、トップの中島は約5秒のリードを築いていた。レース終盤、中島はそのアドバンテージをキープ。
このまま優勝するかに思われたが、ラストラップとなった14周目に単独転倒。これにより西條が優勝、中島が2位、田中が3位となった。横澤は8周目に阿久根の攻略に成功したが、表彰台圏内には届かず4位。阿久根が5位、浅井が6位となった。

●優勝  西條悠人(#9)

ありがとうございました。最高です。今年からトレーナーさんに見てもらうようになり、昨年はスゴく苦しいシーズンでしたが、今年は戦うごとに自分の成長を感じることができました。
苦しいだけでなく、楽しいレースもたくさんできました。来年走るクラスは決まっていませんが、頑張ります。

●2位  中島漱也(#3)

もちろん気を抜いたわけではなかったし、ピンピン(※両ヒート優勝)で終わるつもりだったのですが、最後の最後で、恥ずかしいところがでちゃいました。
来シーズンに向けてもっと成長していかないと、世界の壁は見えてこないと思うので、チャンピオンで満足せず、さらに上を目指します。

●3位  田中淳也(#10)

2ヒート連続で表彰台に上がれたことがこれまで一度もなかったので、今年の目標のひとつに掲げていた、両ヒートをまとめるというのができたことは良かったです。
でも、トップから下がっていく展開は悔しすぎ。来年もIA2で走ると思うので、チャンピオンを目指します。

レディース 決勝

川井麻央(#1)と本田七海(#2)のうち先にゴールしたほうか、両者3位以下で川上真花(#4)が優勝なら川上がチャンピオンという状況での決勝は、本田がホールショットを奪い、川井が追ってスタートした
1周目、川井は箕浦未夢(#3)のマークを許したが、2周目以降は徐々に引き離しつつ本田を追撃。しかし本田のほうがわずかに速く、3周目までに約3.5秒のリードを奪った。
4~5周目にかけ、本田と川井のギャップはほとんど変わらず。一方、3番手を走る箕浦の背後には川上が接近した。

6周目、ジャンプで本田がミスして転倒しかけ、これで川井が一気に接近。翌周のリズムセクションで、川井が本田を抜いた。同じ周、後方では川上が箕浦をパス。


そしてレースは8周でチェッカーとなり、逃げ切った川井が優勝して、2年連続4度目のシリーズタイトル獲得を決めた。本田は2位、川上は3位で、表彰台のメンバーと位置は最終ランキングどおり。
川上に離された箕浦は4位、レース中盤から単独走行となった楠本菜月(#10)が5位となった。

●優勝&チャンピオン 川井麻央(#1)

ありがとうございます! 何度も転びそうになって、ちょっと諦めた部分もあったのですが、最後までやるしかないと自分に言い聞かせ、絶対チャンスが来ると思いながら走っていました。しっかり勝てたので良かったです。本当にありがとうございました!!