2023全日本モトクロス開幕戦決勝レポート
2023年の全日本モトクロス選手権シリーズは、今年も熊本県のHSR九州で開幕。4月9日(日)には各クラスの決勝レースが実施されました。
天候は、予選が繰り広げられた前日に続いて晴れ。金曜日までの降雨で土曜日はマディコンディションでスタートしましたが、土曜日の日差しと強い風、夕方の入念なコースメンテナンスにより、決勝日の路面はドライコンディションかつホコリの発生が少ない、ベストな状態となりました。アップダウンがほとんどない土地に設けられた、広いコース幅も特徴とするコースは、基本的なレイアウトを昨秋の全日本開催時から踏襲しながら、細部の仕様を変更。本来は阿蘇の火山灰に由来する黒土の路面ですが、大会前に再び大量の山砂を導入しながらメンテナンスされていました。
なお今大会は、IA1クラスとIA2クラスの両方に、15+1周の3ヒート制が導入されました。レディースクラスは、いつもどおりとなる15+1周の決勝1レース開催です。
IA1ヒート1
今季は、新たなヤマハファクトリーチームからIA1に参戦する、昨年度IA2王者のジェイ·ウィルソン(#27)がホールショット。これにホンダのマシンを駆る小島庸平(#10)と大倉由揮(#6)が続くと、1周目に大倉が2番手に浮上し、小島は転倒後退。ウィルソン、大倉、カワサキを駆る内田篤基(#8)、ホンダに乗る大塚豪太 (#7)、カワサキファクトリーチームの能塚智寛(#2)の順で、オープニングラップをクリアしました。
2周目、内田が大倉をパスして2番手に浮上。この段階で、トップのウィルソンはすでに4~5秒のアドバンテージを確保していました。そして翌周以降もリードを拡大。そのまま最後まで独走したウィルソンが、まずは1勝を挙げました。レース中盤、2番手の内田も後続に対して4~5秒のアドバンテージを築き、単独走行に近い状態。一方、3番手争いはし烈で、大倉が能塚と大塚を僅差で従える状態が続きました。しかし6周目に、能塚が大倉をパス。内田がIA1自己最高位の2位、能塚が3位、大倉が4位、大塚が5位、6番手走行中の6周目に転倒で遅れたヤマハファクトリーチームの渡辺祐介(#3)が6位でした。
IA1ヒート2
ホールショットは再びジェイ·ウィルソン(#27)。これに大倉由揮(#6)と内田篤基(#8)が続いてレースがスタートしました。1周目から、大倉と内田は激しいポジション争いを繰り広げ、まずは大倉が先行。2周目以降、ウィルソンは早くも独走状態を築き、2番手争いは大倉と内田と渡辺祐介(#3)の混戦となり、そこから4秒ほど遅れてヤマハファクトリーチームの富田俊樹(#1)が5番手をキープしました。
5周目、2番手の大倉を僅差で追っていた内田が転倒により後退。2番手争いは大倉、渡辺、富田、能塚智寛(#2)となりました。6周目、能塚が富田をパス。抜かれた富田は、この周に転倒して5秒ほど遅れました。8周目には、渡辺が大倉を抜いて2番手に浮上。さらに、ラストラップの9周目には能塚が大倉の攻略に成功しました。レースはウィルソンが独走で勝利を収め、最後まで続いた僅差のバトルを制した渡辺が2位、能塚が3位、大倉が4位、富田が5位となりました。
IA1ヒート3
好スタートを決めたのは能塚智寛(#2)。ジェイ・ウィルソン(#27)はスタート直後こそ6番手でしたが、混戦の中でスルスルと順位を上げ、ヒート1とヒート2は8位に終わったホンダサポートライダーの大城魁之輔(#4)をパスして、1周目を2番手でクリアしました。2周目、ウィルソンは能塚を抜いてトップに浮上。2番手に後退した能塚を、約4秒差で大城が追いました。
レースが後半に入った5周目、能塚が転倒したことで大城は難なく2番手の座を獲得。6周目、4番手を走行していた内田篤基(#8)がクラッシュして、代わりに大倉由揮(#6)がポジションを上げました。レース終盤、トップ3は単独走行となり、ウィルソンが無キズの3連勝を挙げ、大城が2位、能塚が3位を獲得。大倉が3ヒートすべてで4位、カワサキ系プライベーターの安原志(#13)が大健闘の5位となりました。この安原にラストラップで迫った渡辺祐介(#3)が、転倒により負傷リタイア。代わりに、内田の猛攻を抑えた富田俊樹(#1)が6位となりました。
●総合成績1位(優勝/優勝/優勝)
ジェイ·ウィルソン(#27)
最初に、ヒート3のラストにクラッシュしてケガしたヤマハの渡辺祐介選手が、早く回復することを祈っています。これまで長い間250ccに乗ってきたし、今年は新しいチャレンジとなるので、レースウィークはとてもナーバスでしたが、いずれのレースも素晴らしいスタートが勝利につながりました。娘のポピーが小学校入学なので、いいプレゼントになったと思います。
●総合成績2位(3位/3位/3位)
能塚智寛(#2)
ジェイさんが速すぎて、嫌いになりそうです。まあ、ヒート3はせっかくスタートでトップに立ったのに、自分のミスでクラッシュしたことでリードを大きく拡大されてしまったので、完全に自分が悪いのですが……。シーズンはまだ始まったばかり。ジェイさんは速いですが、自分ももっと速くなって、できることなら次戦にでも打ち負かしたいです。
●総合成績3位(2位/6位/7位)
内田篤基(#8)
シーズンオフの段階から、エンジンやサスペンションのセッティングを煮詰め、フィジカルトレーニングをこれまで以上に質と量ともに充実させてきました。その成果を、ヒート1でいきなり発揮できたのはよかったのですが、ヒート2とヒート3では転倒で後退。スピードは確実に上がっているので、安定して表彰台圏内でゴールできるよう、ミスを減らします。
IA2ヒート1
ホールショットを奪ったのは西條悠人(#8)。これを横澤拓夢(#5)や阿久根芳仁(#11)らが追って1周目をクリアしました。レース序盤、西條が3秒ほどのリードを築きましたが、2番手の横澤が少しずつ距離を詰め、レースが後半に入った5周目には約1.5秒差まで接近。その後、西條も粘りをみせ、トップ争いは約2秒差で膠着状態となりました。
レース後半、横澤の背後には中島漱也(#4)も迫り、7周目には約2秒差。しかし順位変動には至りませんでした。レースは9周でチェッカーとなり、西條がIA初優勝。横澤が2位、中島が3位となりました。4番手争いは阿久根と柳瀬大河(#3)と鴨田翔(#9)の接戦となっていましたが、ここにスペインから全日本に挑戦するビクトル・アロンソ(#58)が割り込み、アロンソが4位、阿久根が5位、柳瀬が6位でした。
IA2ヒート2
ホールショットの田中淳也(#17)を、鴨田翔(#9)や阿久根芳仁(#11)、西條悠人(#8)らが追ってレースがスタート。1周目、阿久根は#9 鴨田をパスしましたが、中島漱也(#4)の先行を許して3番手のままでした。2~3周目にかけ、上位勢は数珠つなぎ状態。4周目の段階では、この周に田中の攻略に成功した中島がトップ、田中が2番手、ビクトル·アロンソ(#58)が3番手で、さらにアロンソと2秒ほど間隔を開けて阿久根ら6台が続きました。
5周目、アロンソがミスにより6番手まで後退。これで3番手に再浮上した阿久根は、約2秒先行する田中を追いました。さらに、最終ラップとなった9周目には阿久根のすぐ背後に西條と鴨田と浅井が接近して、4台によるバトルに発展。しかしここは、阿久根が順位を守りました。そしてレースは、中島がIAクラス初優勝。田中が全日本IA初表彰台登壇となる2位、阿久根も同じくIA初表彰台の3位となりました。西條が4位、鴨田が5位、浅井が6位に入賞しています。
IA2ヒート3
ホールショットの土屋元希(#25)をビクトル・アロンソ(#58)がすぐにパス。2番手には阿久根芳仁(#11)が浮上しました。しかし阿久根は浅井亮太(#2)の先行を許し、アロンソがトップ、浅井が2番手、阿久根が3番手で1周目をクリア。2周目には、横澤拓夢(#5)が鴨田翔(#9)をパスして4番手にポジションアップしました。そして3周目には、阿久根と横澤が僅差の3番手争いを繰り広げました。
4周目、横澤が阿久根を抜いて3番手に浮上。この段階で、横澤と2番手の浅井は10秒近くも離れた状態になっていました。また同じ周、阿久根は鴨田にも先行され、鴨田が4番手に上がりました。5周目、7番手を走っていた柳瀬大河(#3)が転倒して12番手まで後退。レース終盤、上位勢はそれぞれ単独走行に近い状態となりました。そしてアロンソが初優勝、浅井が2位、横澤が3位でチェッカーを受けました。鴨田は4位。6周目に阿久根をパスした西條悠人(#5)が5位、阿久根が6位でした。
●総合成績1位(3位/優勝/8位)
中島漱也(#4)
昨年はジェイ·ウィルソン選手にまるで歯が立たず、世界との差を痛感。そこでシーズンオフには、新しいことにも取り組んできました。ヒート2の初優勝で、まずは成長できていることを確認できました。ヒート3は、1周目のスタート直後に転倒してしまいました。ビクトル·アロンソ選手という新たなライバルも出現しましたが、さらに強くなって勝利を重ねたいです。
●総合成績2位(優勝/4位/5位)
西條悠人(#8)
ヒート1は、スタートが決まって初優勝できました。ヒート2は、スタートから逃げ切るという目標は達成できず、表彰台圏内からは外れたのですが、ライディングは悪くありませんでした。ただヒート3は、だいぶ疲れもありましたね。今季は、まずトップ5を逃さず確実にポイントを重ねることがテーマ。そうすればチャンピオンも見えてくると思います。
●総合成績3位(2位/12位/3位)
横澤拓夢(#5)
ホンダのホームコースで、CRF250Rをライディングして表彰台に上がれたことには満足しています。本当は勝ちたかったですし、ヒート1はそのチャンスがあったと思いますが、散水量が意外と多くてトップの西條悠人選手に近づくと泥を浴び、しかも速いラインが限られていたことで、勝負に持ち込めませんでした。次戦こそ、まずは1勝を挙げたいです。
レディース 決勝
ホールショットの箕浦未夢(#9)に川井麻央(#2)が続くと、1周目の中盤で川井がトップに浮上。そのまま箕浦を引き離し、川井はオープニングラップだけで約5秒のリードを奪いました。2周目には、本田七海(#4)が箕浦に代わり2番手。依然として川井のアドバンテージは5秒ほどあり、3周目以降にその差は少しずつ拡大していきました。
本田から大きく遅れて単独3番手となった箕浦の背後には、瀬尾柚姫(#8)や川上真花(#7)が接近。6周目に川上が瀬尾をパスし、8周目のラストラップには箕浦と川上の大接戦となりました。しかしここは箕浦が順位を死守。川井が優勝、本田が2位、箕浦が全日本初表彰台登壇となる3位に入賞しました。川上が悔しい4位、瀬尾が5位、1周目のクラッシュで出遅れた楠本菜月(#5)が6位でした。
●優勝 川井麻央(#2)
シーズン最初のレースということもあり、スタート前はかなり緊張していましたが、1周目からトップに立ったことで余裕ができました。昨年は、同点かつ優勝回数も同じなのにチャンピオンを逃すという、悔しいシーズンでした。今季は、昨年の忘れ物を手にするために走ります。もちろん、すべてのレースで勝つことを目標に戦っていきます。