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全日本モトクロス選手権 最終戦 第60回MFJ-GPモトクロス大会決勝レポート

年間7戦で競われる2022年の全日本モトクロス選手権シリーズは、いよいよシーズン最終戦。7月の第3戦でも使用された宮城県のスポーツランドSUGOで、第60回MFJ-GPモトクロス大会が開催され、11月月13日(日)に各クラスの決勝レースが実施されました。
ふたつの丘にまたがるようにレイアウトされたSUGOインターナショナルモトクロスコースは、9月の大改修により第3戦とはかなりのセクションに手直しが加えられた状態。全体的には、コースアウト側のバンクがなくジャンプも少なめで、フラットな印象に変わりました。
決勝日の天候は曇りで、路面はドライコンディション。粘土質の路面は、大会前から掘り起こした上で入念な散水作業が施されていて、区間によっては走行により深いワダチが発生しました。
なお全日本格式のクラスでは、レディースクラスのみこの最終戦までチャンピオン決定が持ち越されていました。

IA1ヒート1

全日本最高峰のIA1クラスは、日没時間を考慮して2ヒート制としては通常よりも5分短い25分+1周の2レースを実施。そのヒート1では、ヤマハファクトリーチームから参戦する渡辺祐介(#4)がホールショットを奪い、これにホンダサポートライダーの大城魁之輔(#22)と大倉由揮(#23)、カワサキに乗る内田篤基(#25)、前戦で自身初のシリーズタイトル獲得を決めているヤマハファクトリーチームの富田俊樹(#2)らが続きました。
大倉は順位を下げ、1周目は渡辺、大城、富田、カワサキファクトリーチームの能塚智寛(#3)、内田、大倉、ホンダを駆る小方誠(#5)のオーダー。2周目に小方が大倉を先行し、3周目には富田と能塚が大城を抜きました。
さらに翌周、能塚が富田をパス。これで上位勢は渡辺、能塚、富田、大城、小方の順となりました。

この段階で、トップの渡辺は約5秒のリード。翌周以降も渡辺はリードを拡大して、レース中盤には約8秒のアドバンテージ得ました。2番手を走る能塚から4秒ほど遅れて3番手を走る富田の2~3秒後方では、大城と小方が僅差の4番手争い。
すると両者は接近戦を続けたまま富田に近づき、ラスト2周となった14周目には富田と大城と小方の3台による3番手争いに発展しました。しかし最後まで順位は変わらず。
レースは渡辺が独走で制して今季2勝目を挙げ、能塚が2位、僅差で順位を守った富田が3位、大城が4位、小方が5位でした。6位には、レース中盤からペースを上げて内田を11周目にパスした大塚豪太(#7)が入っています。

●ヒート1 優勝 渡辺祐介(#4)

めちゃくちゃ気持ちいいです。最初から最後までずっと攻めていました。熱田孝高さんによく「ロボットだな」と言われるんですが、これだけトバしてもレース後にそれほど疲労を感じていません。
この調子でヒート2も一番を獲っちゃいたいと思います!

IA1ヒート2

スタート直後のトップグループは大混戦。その中で大倉由揮(#23)が先頭に立ち、これを星野優位(#8)や能塚智寛(#3)、道脇右京(#14)、内田篤基(#25)、富田俊樹(#2)が追いました。
ヒート1で優勝した渡辺祐介(#4)は、ミスによりほぼ最後尾からのレースとなりました。
2周目も上位勢は接戦で、今度は能塚がトップ。星野が5番手に後退し、道脇が3番手、富田が4番手に順位を上げました。
3周目、富田は大倉を抜いて2番手にポジションアップ。翌周にはトップを走る能塚との距離を詰め、5周目に逆転しました。
この段階で上位勢は富田、能塚、大倉、道脇、大城、内田、星野の順。それぞれが2~4秒ほど間隔を開けた、かなり縦に長いグループとなっていました。

このうち富田と能塚と大倉の距離は、レース後半にかけ膠着状態。一方で大倉の背後には、7周目に道脇をパスした大城が近づいてきました。そして10周目に、大城が大倉を抜きました。
同じ周、この3番手争いから10秒ほど遅れた5番手争いでは、7周目に内田を攻略した星野が道脇をパス。5番手に順位を上げました。
トップの富田は3秒ほどのリードを保ちながら周回。しかし12周目以降、2番手の能塚がラップタイムを落とし、これでギャップが拡大しました。
また、4番手に後退した大倉は大城を1~2秒差でマークしていましたが、こちらも13周目にバックマーカーを処理するときにタイムロスして、離されてしまいました。
そしてレースは14周で終了。富田が勝利を収め、能塚が2位、大城が3位、大倉が4位、星野が5位、道脇が6位でした。

●ヒート2 優勝 富田俊樹(#2)

本当はヒート1から、チャンピオンらしい走りをファンやライバルたちに見せたいと思っていたのですが、ヒート1は腕上がりで……。ヒート2はスタートでちょっと出遅れましたが、勝てました。今季はとても安定していて、表彰台を逃したのは一度のみ。バイクも毎回完璧な状態で、スポンサーの協力も心強く、支えてくれた多くの方々に感謝しています。

IA2ヒート1

IA2クラスも、決勝レースは通常より5分短縮の25分+1周。そのヒート1では、シーズン全勝でこの最終戦に臨んだヤマハファクトリーチームのジェイ・ウィルソン(#16)がホールショットを奪い、これに浅井亮太(#21)と鳥谷部晃太(#4)、スポット参戦した19歳ニュージーランド人ライダーのブローディ・コノリー(#66)、中島漱也(#5)、柳瀬大河(#10)が続きました。
1周目、コノリーは2番手に順位を上げてウィルソンに肉迫。土曜日の段階で足を引きずる素振りを見せていて負傷が疑われるウィルソンは、ベストラップタイムではコノリーに及ばず、2周目にコノリーが先行しました。
しかし3周目に、ウィルソンが再逆転。その直後、ブローディが散水でスリッピーいなった路面で転倒しかけてコースアウトし、2~3秒遅れました。

この段階で、3番手の浅井はコノリーから約7秒遅れ。その後も、ウィルソンとコノリーは3番手以下をどんどん引き離していきました。
5周目にもコノリーはミスで2秒ほどタイムロスし、同じ周にウィルソンがペースを上げたことで、ウィルソンとのギャップは約5秒。
その後、両者の間隔はほぼ保たれ、トップ争いは膠着状態となりました。一方、3番手争いは浅井を鳥谷部と中島が追っていましたが、5周目に中島が鳥谷部を抜き、7周目から浅井に肉迫。
翌周、中島が浅井をパスしました。一方、鳥谷部はマシントラブルで後退し、5番手には柳瀬が浮上。その2秒ほど後ろに阿久根芳仁(#26)も続きました。
レース終盤まで、ウィルソンとコノリーは間隔を保ちながら走行。レースは14周でチェッカーとなり、ウィルソンが優勝、コノリーが2位となりました。
中島は浅井を大きく引き離して3位。浅井が4位、順位を守った柳瀬が5位、阿久根が6位でした。

●ヒート1 優勝 ジェイ・ウィルソン(#16)

ニュージーランドからブローディ・コノリー選手がスポット参戦してきて、若さ溢れるアグレッシブなライディングをするライダーだということはわかっていたし、実際に彼の走りは素晴らしかったと思います。
コースは、カタい路面が露出したスリッピーなセクションも一部にありましたが、これまでもスポーツランドSUGOを走ってきたので、「This is SUGO」だとよく理解できています。
ブローディとの接戦にはプレッシャーもありましたが、だからこそ自分も最後まで頑張ることができました。

IA2ヒート2

ブローディ・コノリー(#66)がホールショット。これに横澤拓夢(#36)と阿久根芳仁(#26)が続きました。
スタート直後、鳥谷部晃太(#4)と接触した柳瀬大河(#10)が転倒し、これに巻き込まれた中島漱也(#5)もクラッシュ。
中島はそのままリタイアとなりました。シーズン全勝が懸かったジェイ・ウィルソン(#16)はかなり出遅れ、1周目から激しく追い上げるも7番手。
ウィルソンは2周目に4番手、3周目に3番手、4周目には横澤をパスして2番手に浮上しましたが、この段階でコノリーは約8秒のアドバンテージを築いていました。
コノリーとウィルソンのベストラップタイムは互角で、その後のラップタイムは同じかコノリーがコンマ数秒程度速いくらい。レース中盤には10秒程度までその差が拡大しました。

一方、ウィルソンにパスされた横澤は、トップ2台から完全に遅れながら3番手をキープ。それでも、4番手を走る浅井亮太(#21)をじわじわと引き離し、レース中盤には6秒ほどのリードを奪いました。
レース後半になっても、コノリーとウィルソンのペースはほとんど変わらず。そのまま独走したコノリーが優勝、ウィルソンが2位となり、最後のレースでウィルソンはシーズン全勝の大記録を逃すことになりました。
一度は引き離した浅井に迫られたものの、最後までポジションを守った横澤が3位。浅井が4位、数周にわたり阿久根を激しく攻め立て最終ラップに逆転した西條悠人(#7)が5位、阿久根が6位でした。
なお、タイからスポット参戦したクリッサダ・チャムロンチャリー(#62)は、ヒート1で10位、ヒート2では12位を獲得しています。
柳瀬は14位に終わり、これによりポイントランキングでは浅井が柳瀬を逆転して2位を確定させました。

●ヒート2 優勝 ブローディ・コノリー(#66)

ジェイ・ウィルソン選手が日本で大活躍していることは事前に知っていたので、だからこそジェイの連勝をストップすることを目的に来日しました。
それが達成できて、まさに計画どおりという感じです。ジェイとは少し年齢が離れているので、同じクラスでこれまで走ったことはなかったのですが、もちろん彼と会ったことや同じ大会で走ったことはあります。
スポーツランドSUGOは、高低差があって楽しかったです。設備面も素晴らしいですね。
あと、セットアップがとてもプロフェッショナルな印象。この部分でも、ニュージーランドを上回っていると感じました。

レディース 決勝

15分+1周の1レースが実施されたレディースクラス。畑尾樹璃(#27)と川井麻央(#1)と箕浦未夢(#10)がし烈なホールショット争いを繰り広げ、川井が先行したところからすぐに箕浦がトップ浮上を果たしました。
最初のタイトターンではマルチクラッシュが発生し、逆転チャンピオンの可能性が残っていた本田七海(#2)がこれに巻き込まれて大きく出遅れました。1周目は箕浦、川井、ポイントリーダーの久保まな(#3)、川井と同点で並んでいた小野彩葉(#4)、畑尾のオーダー。本田は13番手まで追い上げました。
2周目、川井が箕浦を抜いてトップに浮上。小野と畑尾は激しい4番手争いを繰り広げましたが、ここは小野がポジションを守りました。

3周目、久保が箕浦をパスして2番手浮上。この間に川井はリードを約4秒に拡大しました。翌周、最終コーナーで久保がエンスト。これで久保は4番手まで後退し、トップを走る川井のアドバンテージは10秒近くにまで広がりました。5周目になると、2番手の箕浦に小野、そこから8秒ほど遅れた久保に本田が肉迫。
久保はマシントラブルによりシフトチェンジができないまま走行を続けました。そしてラスト2周となった7周目、小野が箕浦、本田が久保を抜きました。
さらにファイナルラップで、6秒ほどあった距離を詰めて本田が箕浦を逆転。川井が優勝、小野が2位、本田が3位、箕浦が4位、久保が5位となりました。
これにより、久保と川井が同点に。規定により上位入賞回数でチャンピオンが決まるため、優勝回数は2回で並んでいたものの、2位入賞回数が1回多かった久保が、自身初のシリーズタイトルを獲得することになりました。

●優勝 川井麻央(#1)

逆転チャンピオンのためには、まず自分が勝たないことには話にならないので、レース前はかなり緊張していました。
スタートで上位を確保でき、勢いのいい箕浦未夢選手を冷静に攻略してトップに立ってからは後ろもかなり離れたので、楽に勝つことができました。
シーズン前半はまるで思いどおりの走りができずにいましたが、後半に自分の走りを取り戻すことができたと思います。1年間、応援ありがとうございました。

●チャンピオン 久保まな(#3)

ようやくチャンスが巡ってきて、今日はしっかり走ってチャンピオンと思っていたら、途中でギヤが入らなくなり、その影響で5位フィニッシュ。
もう終わったと思い、ゴールと同時に悔しくて泣いていたのですが、まさかのチャンピオンでした。
TEAM HAMMERのみんなやホンダをはじめとする様々な方々のおかげでチャンピオンになれたと思っていますが、まずは私が好きなことをずっとやらせてくれてきた両親に感謝したいと思います。ありがとう! 
本当に幸せなレース人生だと思います。長い間応援してくださった皆さん、本当にお待たせしました!