1. HOME
  2. ブログ
  3. 2025全日本モトクロス選手権 第1戦決勝レポート

2025全日本モトクロス選手権 第1戦決勝レポート

年間7戦で競われる2025年の全日本モトクロス選手権シリーズは、熊本県・HSR九州で待望の今季開幕戦を迎えた。
今大会は、4月13日(日)に予選と決勝をすべて実施するワンデースケジュールで実施され、全日本モトクロスにおける新たな試みとして入場無料で開催された。

HSR九州のモトクロスコースは、ハイスピードかつダイナミックなレイアウトを特徴としてきたが、2022年秋の大幅リニューアルで全長がやや短縮され、テクニカルなタイトターンも増えた。
今大会に向けては、基本的なレイアウトこそ踏襲されたが、各セクションのジャンプなどに仕様変更が施された。本来の土質は阿蘇の火山灰に由来する黒土だが、山砂を搬入して整備されてきた歴史があり、今大会直前にも1コーナーには粗目の砂が新たに敷かれた。

大会前日の土曜日夕方から降雨となり、これで路面はマディコンディションに。日曜日朝に雨は止み、急激に天候は回復したものの、各クラスの予選が実施された時間帯はマディだった。
その後、強めの風が吹き続けたこともあり路面は一気に乾き始め、最終的にはほぼドライとなったが、ギャップやレールが多い難しいコンディションとなった。

【IA1ヒート1】

全日本最高峰となるIA1クラスの決勝は、30分+1周の2ヒート制で実施された。今大会最初の決勝レースとなったヒート1でホールショットを奪ったのは、ホンダがサポートする横山遥希(#2)。
これにカワサキを駆る内田篤基(#10)、ヤマハファクトリーチームから参戦するIA1連覇中のジェイ・ウィルソン(#1)、ホンダの大倉由揮(#4)、ヤマハセカンドチームの大城魁之輔(#8)が続いた。
ガスガスに乗るイタリア出身のジュゼッペ・トロペペ(#42)は出遅れ、1周目は8番手。
2周目、ウィルソンが内田と横山をパスして先頭に立ち、これで3番手に後退した内田の背後には大倉が迫った。

3周目、内田と順位争いを繰り広げていた大倉が転倒して、トロペペに次ぐ6番手まで後退。
翌周以降、トロペペは少しずつ順位を上げていった。
この間にもトップのウィルソンはリードを拡大し、5周目には約8秒のアドバンテージを確保。しかし翌周にトロペペが2番手まで浮上すると、翌周からウィルソンとトロペペのギャップは一気に減っていった。
一方、この2台から遅れた日本人勢は、3周目に横山を抜いた内田を先頭に、横山と大倉と大城がやや縦に長く続いた。9周目、トップ争いではトロペペが先行。
しかしその直後、トロペペのマシンから白煙が噴き出し始めた。またセカンドグループからは、大倉が転倒により脱落した。

10周目、トロペペがマシントラブルでリタイア。これによりウィルソンが再び先頭に立ち、独走状態となった。
2番手争いは、レース中盤から内田と横山の接近戦が続いており、この状態でレース終盤へ。4番手の大城は単独走行で、ここからさらに大きく遅れた大倉の2秒ほど後方には、カワサキに乗るIA1ルーキーの西條悠人(#37)が迫った。
ラスト2周の14~15周目、横山がミスして遅れ、これで内田が独走。最後は大城が横山に近づいたが、ここは横山が確実に順位を守り、レースはウィルソンが優勝、内田が2位、横山が3位、大城が4位、こちらも最後までポジションを守った大倉が5位、西條が6位となった。

●優勝  ジェイ・ウィルソン(#1)

前夜にけっこうな量の雨が降ったから、かなりタフでチャレンジングなレースになりましたが、優勝できてうれしいです。
今年はペペ(ジュゼッペ・トロペペ)という強敵が全日本に参戦するということで、とくにこのレースはナーバスになっていました。
逆転されたときに、ペペのバイクがスモークを噴いているのが確認できたので、10秒程度の差なら抜き返すチャンスはあると思いました。
今年はペペもいるし、ヤマハのセカンドチームをはじめとする日本人ライダーたちも強くなっているので、エキサイティングなシーズンになりそうです。

【IA1ヒート2】

ヒート1でマシントラブルが発生したジュゼッペ・トロペペ(#42)は、このヒート2も出走できずリタイア。レースはジェイ・ウィルソン(#1)のホールショットで幕を開け、これに横山遥希(#2)や大城魁之輔(#8)、内田篤基(#10)、西條悠人(#37)、能塚智寛(#5)が続いた。
大倉由揮(#4)はスタートこそ出遅れたが混戦の中で追い上げ、能塚に次ぐ7番手で1周目をクリア。
レース序盤、ウィルソンは徐々にリードを拡大し、2~7番手は縦に長めの集団となり、8番手以下は大きく遅れていった。

4周目には、3番手の大城と4番手の内田、5番手の西條と6番手の能塚が接近戦を開始。翌周には、2番手の横山がウィルソンに7秒ほど離されながらも後続に対して6秒ほどのリードを奪い、これでトップのウィルソンと2番手の横山は単独走行となった。
一方、5番手争いでは能塚が先行し、西條と大倉が追う三つ巴の展開に。
しかし6周目に能塚は転倒して集団から脱落し、翌周には大倉が西條をパスして5番手に順位を上げた。この段階で、なおも大城を1~2秒差でマークする内田と、大倉のギャップは約10秒。
それでも大倉は、西條を引き離しながら少しずつ距離を詰めていった。

トップのウィルソンと2番手の横山は、9周目の段階で10秒ほどの差になっていたが、10周目以降は横山が距離を詰めていった。
11周目、大城と内田の3番手争いが接近戦となり、翌周に内田が逆転成功。その後、内田がリードを拡大した。13周目には、横山がウィルソンまで約3.5秒差に迫ったが、ここでウィルソンがペースアップ。

16周目のラストラップにかけて逃げ切ったウィルソンが勝利し、横山は2位となった。内田は、後続を離して3位フィニッシュ。
追い上げを続けた大倉が、ラスト2周で大城に追いついて逆転し、4位に大倉、5位に大城、6位に西條となった。

●優勝  ジェイ・ウィルソン(#1)

アリガトウ。ツカレタネエ~。キュウシュウノミナサン、コンニチハ。クマモトデ、レースガデキテ、ウレシイデス。コノレースノタメニ、ニュージーランドデ、ニホンノライダータチト、トレーニングシテキマシタ。
コトシモガンバリマス。ミナサンノオウエン、ヨロシクオネガイシマス!

【IA2ヒート1】

若手と中堅が中心のIA2クラスも、30分+1周の2ヒート制で競われた。
ディフェンディングチャンピオンの中島漱也(#1)、悲願の初チャンピオンを狙う横澤拓夢(#2)、中島と同じくファクトリーに次ぐヤマハセカンドチームに所属することになった田中淳也(#4)、ドイツ出身のブライアン・シュー(#53)らがしのぎを削る。
昨年度ランキング3位の西條悠人は、IA1クラスにステップアップ。同4位の柳瀬大河(#5)は、練習中のケガでこの大会を欠場した。

ヒート1は中島のホールショットで幕を開け、道脇右京(#47)や村上洸太(#28)らをパスしたシューが2番手に。2周目以降、早くも中島とシューのマッチレースになっていった。
5番手には鴨田翔(#6)、6番手には田中淳也(#4)、7番手には吉田琉雲(#14)。横澤は出遅れ、1周目13番手からの追い上げを強いられた。


道脇は2周目以降、村上は4周目に順位を落とし、これで鴨田が3番手、田中が4番手に。しかしこの段階で、接近戦を展開する中島とシューは、鴨田を15秒ほど先行しており、その後もギャップは拡大していった。

シューは中島のマークを続けていたが、残り時間が10分になろうかという10周目に逆転。
周回遅れの影響もあり中島はついていけず、そのまま最終ラップの16周目まで逃げ切ったシューが優勝、中島が2位となった。
鴨田は3番目、田中は4番目、6周目に道脇をパスした吉田は5番目にチェッカーを受けたが、レース後にこの3名を含む12名のライダーに、フラッグによる規制区間での違反があったとの裁定が下り、それぞれ2順位降格のペナルティが課された。
これにより、8周目に6番手まで順位を上げていた横澤が3位、1周目14番手から追い上げた佐々木麗(#9)が4位、鴨田が5位、田中が6位となった。

●優勝  ブライアン・シュー(#53)

また日本でレースを戦うことができて、本当にうれしく思っています。自分にとってはいいシーズンインでしたが、IA1に参戦するチームメイトがアンラッキーなトラブルによりノーポイントに終わり、残念に思っています。日本の皆さん、応援ありがとうございます。

【IA2ヒート2】

今年はIA2クラスに戻った道脇右京(#47)がホールショット。これに吉田琉雲(#14)と中島漱也(#1)、鴨田翔(#6)、横澤拓夢(#2)らが続いたが、吉田はオープニングラップで転倒して、スタートで出遅れたブライアン・シュー(#53)に次ぐ11番手まで後退した。
横澤は1周目から積極的に順位を上げ、中島に次ぐ3番手まで浮上。2周目には道脇が4番手までポジションを落とし、これで上位勢は中島、横澤、鴨田、道脇のオーダーとなった。
3周目には、中島と横澤が後続を離しはじめ、これで3番手の鴨田は前後ともに5秒以上の間隔がある状態。4番手の道脇には、追い上げてきた田中淳也(#4)とシューが僅差で迫った。

4周目、シューが田中と道脇をパスして4番手に浮上。この段階で5秒ほど先行していた3番手の鴨田を追った。田中も道脇の攻略に成功して5番手。
トップの中島と2番手の横澤は、依然として1~2秒程度の僅差だったが、翌周から中島がじわじわとリードを拡大していった。この5周目、シューは鴨田をパスして3番手に浮上。
この段階で横澤は10秒ほどのリードを築いていたが、約4周かけてシューがこれを削り取っていった。
また、6周目には田中も鴨田に追いつき、逆転に成功。これで4番手に田中、5番手に鴨田のオーダーとなった。

9周目、横澤とシューが接近戦を開始。翌周には、シューが先行した。この段階で、トップの中島と2番手のシューは約7秒差。ここから、シューは横澤を一気に離しつつ中島に近づいていった。
そして13周目から、中島とシューのトップ争いがスタート。
中島もペースを上げて応戦し、シューを抑え続けたが、最終ラップとなった16周目に逆転を許し、これでシューが再び優勝、中島が2位となった。横澤は3位でフィニッシュ。
田中は4位、鴨田は5位となり、1周目の転倒後に追い上げた吉田が6位に入賞した。

●優勝  ブライアン・シュー(#53)

スタートはスゴく悪かったけど、そこからは自分のペースを保ちつつ、周回ごとに追い上げていくことができました。
トップの中島漱也選手に追いついてから、彼がプッシュしはじめ、それに対応するため自分もハードに攻めたから、結果的にとても楽しめました。

【レディース 決勝】

レディースクラスの決勝は、15分+1周の1レースのみ実施。昨年、川井麻央(#1)と最終戦までし烈なチャンピオン争いを繰り広げて敗れた本田七海はIBオープンクラスに参戦し、この2名にシーズン終盤まで喰らいついてランキング3位となった川上真花(#3)は、ケガにより今大会を欠場している。

レースは、楠本菜月(#4)と箕浦未夢(#6)と川井がホールショット争いを繰り広げ、まずは箕浦が先行。1周目をそのまま箕浦がトップでクリアし、川井が約1.7秒差で追い、3番手の楠本は川井から約4秒遅れ、これに穗苅愛香(#8)と松木紗子(#10)が続いた。


2周目に川井は箕浦との距離をさらに詰めたが、翌周にミスして約2.5秒差。それでも4周目には、一気にペースアップした川井が箕浦をパスしてトップに立った。

この段階で、3番手の楠本は箕浦と約4秒差。さらに穗苅も楠本を1~2秒差でマークしており、6周目には川井のリードが7秒近くにまで拡大した一方で、箕浦と楠本と穗苅がひとつの集団になり始めた。そしてラスト2周となった7周目には、三つ巴の2番手争いが開始。
8周目の中盤で、楠本の隙をついて穗苅が先行した。そしてレースは川井が優勝。箕浦が2位、穗苅が全日本初表彰台となる3位、楠本が4位となった。

●優勝 川井麻央(#1)

ありがとうございます! 昨日の雨で難しいコース状況となり、とくに150ccにとっては厳しいコンディションだったのですが、その中でも冷静に前を追うことができたと思います。
今年もチャンピオンを獲るという目標はもちろんありますが、それだけでなく全戦全勝を狙っていきたいと思います。