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全日本モトクロス第3戦決勝レポート

2024年の全日本モトクロス選手権シリーズ第2戦は、熊本県·HSR九州で開催。今季は、第3戦中国大会の中止に伴う措置として、当初からこの週末に開催される予定だった第2戦を、4月20日の土曜日に予選と決勝を実施するワンデースケジュールに変更。
加えて、翌日曜日に第3戦として同様のスケジュールをこなすことになった。

HSR九州のモトクロスコースは、ハイスピードかつダイナミックなレイアウトを特徴としてきたが、2022年秋の大幅リニューアルで全長がやや短縮され、テクニカルなタイトターンも増えた。
今大会も基本的なレイアウトは踏襲されているが、各セクションに仕様変更が施され、コース幅がタイトな区間が増やされ、コーナーは全体的にカントが少ないフラットなデザインとなった。
本来の土質は阿蘇の火山灰に由来する黒土だが、山砂を搬入して整備されてきた歴史がある。

土曜日午後に降り始めた雨は、その後に小康状態となり、朝のタイムアタック予選はむしろベストに近いコンディションだったが、これを終えたあたりから土砂降りとなり、一気にコースはマディ状態に。とくに午後のレースは、随所に深いワダチや水たまりが発生し、ときには豪雨のような状態で視界も悪く、スタックや転倒が続出する過酷なコンディションとなった。

IA1ヒート1

前日の第2戦と同じく、全日本最高峰のIA1クラスは、公式練習を兼ねた15分間のタイムアタック予選、30分+1周の決勝ヒート1、15分+1周の決勝ヒート2が実施された。

決勝ヒート1では、今季はホンダにマシンをスイッチしつつ全日本に復帰して、初めて最高峰クラスに挑戦する横山遥希(#41)がホールショット。これに同じくホンダを駆る大倉由揮(#2)と、ヤマハファクトリーチームから参戦する昨年度王者のジェイ・ウィルソン(#1)が続くと、激しいバトルを展開し、ウィルソンが先行した。

4番手にはカワサキファクトリーチームの能塚智寛(#7)、5番手には昨年度のIA2王者で今季はガスガスに乗り替えて最高峰クラスを戦うビクトル·アロンソ(#33)。
ウィルソンは、1周目に約3秒あった横山との距離を詰め、3周目には背後に迫った。この周、アロンソは転倒により脱落。ホンダに乗る5番手の大塚豪太(#6)は、4番手の能塚から約18秒遅れとなった。

4周目、ウィルソンが転倒して3番手後退。これで横山がトップ、大倉が約4秒差の2番手となった。レース中盤、大倉は横山を3~4秒差でマーク。ウィルソンは8~9周目にやや遅れ、大倉とのギャップは10秒以上になった。また、4番手の能塚と5番手の大塚も、完全に単独走行となった。

10周目、バックマーカーの影響で大倉がタイムロスし、これで横山のリードは約6秒。ところが翌周、横山が転倒して3番手に後退した。これで大倉と約7秒差の2番手にはウィルソンが浮上したが、そのウィルソンも13周目に転倒。
最後は、大倉を4~5秒差で横山が追った。ここはしっかり大倉が逃げ切り、15周終了時点でチェッカー。そして大倉が全日本最高峰クラスの参戦3年目で初優勝を挙げた。横山が2位、ウィルソンが3位、能塚が4位、大塚が5位となった。

IA1ヒート2

スタート直後の1コーナーに3番手あたりで進入した大倉由揮(#2)が前転。後続に轢かれた大倉は、完全に遅れてなんとか再スタートを切った。ホールショットは再び横山遥希(#41)。これにビクトル・アロンソ(#33)とジェイ・ウィルソン(#1)と能塚智寛(#7)が続き、6秒ほど遅れた5番手はホンダに乗る池谷優太(#13)が確保した。

2周目、最大の難所となっていたセクションでウィルソンがスタック。復帰に1分以上を要し、トップ集団から完全に離脱した。能塚もこの周にミスして後退し、これでアロンソが2番手。
3周目には能塚が3番手まで順位を回復し、トップの横山を約5秒差でアロンソが追い、アロンソから約11秒差で能塚が3番手となった。

4周目、横山が転倒し、この間にアロンソが先行。しかし翌周、ウィルソンと同じポイントで今度はアロンソがスタックし、こちらは2分に迫るロスタイムとなった。アロンソに代わり2番手に浮上した能塚は、一気に横山へと接近。この周のリズムセクションで並んだが、ここで両者が接触して能塚のみ転倒した。
能塚は、マシンのハンドルが折れてここでリタイア。これにより2番手に浮上したのは、カワサキにのる安原志(#8)だった。

しかし安原とトップの横山は17秒差で、その後もギャップは拡大。最後まで逃げ切った横山が勝利を収め、安原が全日本最高峰クラスでは自己最高位となる2位でゴールした。
3位には、序盤から上位でレースを進めた池谷。最終ラップには転倒を喫し、10秒ほどの差で追っていた安原との距離は拡大したが、4位となったチームメイトの小方誠(#9)を抑え、34歳で初めて全日本最高峰クラスの表彰台に立った。

●総合成績1位(2位/優勝)
横山遥希(#41)

ヒート1は、悔しいのひと言。転倒さえなければ……と思いますが、これもレース。それでも、すぐに復帰して最後は大倉由揮選手に迫れたので、スピードは見せられたと思います。そしてヒート2で、ようやく勝つことができました。
ここまで、勝てそうなレースもあったのですが、自分のミスや気持ちの弱さで逃していたので、ほっとしています。こうやって勝てたのも、ホンダやメカニックをしてくれている妻をはじめ、多くの方々が協力してくれているから。ここで終わらず、まだまだ勝ち続けたいと思います!

●総合成績2位(優勝/7位)
大倉由揮(#2)

ここにたどり着くまで本当に時間がかかりました。(IA2時代を含めて)4年くらい優勝から遠ざかっていて、苦しい時間を過ごしてきたのですが、ようやくここで初優勝できて本当にうれしいです。
皆さんの協力があって成し遂げられたIA1で最初の1勝なので、これを大切に、ここで終わらずまた勝てるよう頑張ります。ヒート2は、スタート直後に前転して後続に轢かれ、カラダの痛みからリタイアすることも考えたのですが、こういうレースは最後まで走り切ればある程度はポイントを取れるはずと考え、諦めずにチェッカーを受けることにしました。

IA2ヒート1

若手と中堅が中心のIA2クラスも、前日の第2戦と同じく、公式練習を兼ねた15分間のタイムアタック予選、30分+1周の決勝ヒート1、15分+1周の決勝ヒート2が実施された。

そのヒート1でホールショットを奪ったのは池田凌(#5)。これに横澤拓夢(#2)や阿久根芳仁(#13)が続くと、まずは横澤がトップに立った。
阿久根はやや順位を落とし、代わりに鴨田翔(#4)が3番手、浅井亮太(#7)が4番手、柳瀬大河(#6)が5番手に。前日の第2戦で勝利した中島漱也(#3)は、転倒によりほぼ最後尾となった。

レース序盤、横澤と池田が僅差のトップ争いを展開。しかし池田は4周目に転倒して3番手に後退し、この段階で横澤は、2番手に浮上した鴨田に対して約8秒のリードを得た。

レース中盤、横澤が依然として7~8秒のアドバンテージを確保してトップを単独走行するのに対して、鴨田と池田、5周目に浅井をパスした柳瀬の3台は、僅差の2番手争いを展開。また、柳瀬から6~7秒ほど遅れた浅井の背後には、田中淳也(#10)が迫った。

池田は鴨田に僅差で迫ったが、9周目からややペースダウン。4周目の段階でゴーグルを外していた柳瀬が、狙いを定めて11周目に池田を逆転した。また田中は、10周目にミスして後退した。
レース終盤、鴨田がトップの横澤にやや接近。しかしその差が4秒以内になることはなく、14周のレースを最後まで逃げ切った横澤が優勝、鴨田が2位、柳瀬が3位、池田が4位、浅井が5位、阿久根が6位となった。

IA2ヒート2

午後になって雨はさらに激しさを増し、走行によって路面がかなり荒れたことで、今大会最終レースとなったIA2決勝ヒート2は、スタックと転倒が多発するサバイバルレースとなった。
スタート直後の1コーナー手前では、柳瀬大河(#6)がクラッシュしてそのままリタイア。好スタートを切ったのは佐々木麗(#15)。これに田中淳也(#10)が続いた。

IA1で鬼門となったスタックポイントはさらにワダチが深さを増し、オープニングラップでは10台以上がここでストップ。この中には、前日の第2戦で両ヒート優勝を達成したポイントリーダーの中島漱也(#3)も含まれていた。

1周目は佐々木、横澤拓夢(#2)、鈴村英喜(#8)、西條悠人(#9)、田中の順でクリア。2周目には横澤がトップに浮上した。3周目には佐々木や田中らがスタックしたマシンに詰まってタイムロスし、この間に池田凌(#5)がトップの横澤と約5秒差の2番手。しかしその池田も翌周にミスして10番手に後退した。

代わって2番手に返り咲いたのは田中。この段階ではまだ、横澤と田中のギャップは約8秒だった。しかし翌周のラップタイムは横澤のほうが10秒速く、これで両者の距離が一気に拡大。
7周目のチェッカーまで逃げ切った横澤が、両ヒート制覇を達成した。田中は2位でフィニッシュ。堅実な走りを続けた浅井亮太(#7)が3位、小笠原大貴(#20)が4位となった。そして中島が、5位まで追い上げてゴールしている。

●総合成績1位(優勝/優勝)
横澤拓夢(#2)

ヒート1は30分が本当に長く感じて、カー君(※鴨田翔選手)が後ろからずっとプレッシャーをかけてきていて、「わ~、やるなあ……」と思っていましたが、ここはホンダのコース。
カワサキのマシンに負けるわけにはいきません。僕のCRFが本当にいい動きをしてくれたので、自信を持って走りました。ヒート2はスゴいグジャグジャで、難しかったのです。
ラスト3周くらいは、勝ちを意識したらニヤニヤしちゃったんですが、無事に勝ち切れることができました。岩手出身ですが、九州でもたくさん応援してもらえてうれしいです。

レディース 決勝

雨がかなり勢いを増す状況でスタートした15分+1周の決勝は、箕浦未夢(#3)のホールショットで幕を開けた。前日の第2戦で勝利している川井麻央(#1)と同2位の本田七海(#2)が続くと、1周目後半で箕浦がミスして失速。
これで川井がトップ、本田が2番手に浮上した。箕浦はさらにコースアウトを喫し、上位勢から完全に脱落して周回遅れに。オープニングラップだけで川井と本田が後続を8秒ほど離し、楠本菜月(#10)と山崎琴乃(#12)と瀬尾柚姫(#5)が僅差の3番手争いとなった。
2周目には、瀬尾が楠本をパス。3周目の段階では、トップの川井が約4秒のリードを築き、本田が2番手となり、3番手争いの集団は本田から30秒以上も遅れた。

レース中盤、川井と本田のギャップはさらに拡大して約8秒に。3番手争いの集団からは3周目に水野が脱落しており、瀬尾を楠本がマークする展開が続いた。ラスト2周となった6周目、タイトターンのスタックポイントで周回遅れがハマり、同じレールに突っ込んだ瀬尾がストップ。
背後の楠本はこの状況をよく見ており、ラインを外して先行した。レース終盤、トップの川井もバックマーカーに阻まれるシーンがあったが、冷静に対処し続けながら走行。リードは少し縮まったが、それでも本田を4秒以上離したまま川井がトップチェッカーを受け、土日連勝を挙げた。

本田は2位、楠本は3位でゴール。瀬尾はスタックとその直後の転倒で6位となり、オープニングラップで転倒した川上真花(#4)が4位となった。

●優勝 川井麻央(#1)

前日の第2戦はドライで勝てたのですが、この第3戦はマディで優勝することができ、どんなコンディションでも速いということを証明できたのが、なによりもうれしいです。
ポイントランキングもかなり激アツな感じなので、この勢いのまま勝利を積み重ね、挽回してチャンピオンを獲ります。応援ありがとうございました!