全日本モトクロス選手権第5戦決勝レポート
年間7戦で競われる2022年の全日本モトクロス選手権シリーズは、隔週開催となるシーズン後半の3連戦に突入。
その初戦となる第5戦が、今季開幕戦の舞台ともなった熊本県のHSR九州で開催され、10月9日(日)に各クラスの決勝レースが実施されました。
アップダウンがほとんどない土地に設けられた幅が広めのコースは、一部のハイスピードセクションがショートカットされたことで、開幕戦と比べて全長が短縮。
本来は阿蘇の火山灰に由来する黒土の路面ですが、一部セクションには大量の山砂が新たに搬入され、完全にサンド質の低速コーナーまで設けられていました。
決勝日の天候は朝から曇り。午前中のIA2決勝ヒート1がスタートする直前から一時的にやや強めの雨が降り、これで路面が濡れてカタい路面の部分はややスリッピーになりましたが、その後に雨は止んで最後まで比較的良好なコンディションが保たれました。
IA1ヒート1
全日本最高峰のIA1クラスは、今季2度目の1大会3ヒート制。通常の半分となる15分+1周のレースとなりました。
そのヒート1では、前戦を練習中のケガで欠場したホンダサポートライダーの大城魁之輔(#22)がホールショット。
ヤマハに乗る星野優位(#8)ヤマハファクトリーチームの富田俊樹、カワサキを駆る内田篤基(#25)が続きました。カワサキファクトリーチームの能塚智寛(#3)はスタート直後に転倒して最後尾。コース中盤で内田も転倒し、3番手にはヤマハファクトリーチームの渡辺祐介(#4)が浮上しました。
さらに富田が大城を抜き、1周目は富田、大城、渡辺、星野、ホンダに乗る大塚豪太(#7)のオーダー。
2周目、トップの富田は約2秒のリードを奪い、2番手の大城には渡辺が僅差で迫り、4番手の星野以下はトップ3台から5秒ほど遅れました。
3周目になると渡辺が大城から少し離れ、これで富田と大城と渡辺はそれぞれ約2秒差。
その後は膠着状態が続き、5周目には渡辺が再び大城に迫るも、6周目には再び2秒ほどに離れました。
また、トップ3台から10秒近く離された4番手の星野を、大塚が1~2秒差でマークする状態が続きました。
7周目、大城がペースを上げて富田まで約1秒差に接近。しかし大城のハイペースは続かず、翌周には再び2秒差に拡大しました。そして10周でチェッカーとなったレースは、最後まで逃げ切った富田が勝利。
大城が2位、渡辺が3位でした。星野は、最後まで大塚にチャンスを与えず4位。大塚が5位、ホンダサポートライダーの大倉由揮(#23)を6周目にパスしたカワサキに乗る安原志(#10)が、6位でフィニッシュしました。能塚は8位でゴールしています。
IA1ヒート2
ホールショットを奪ったのは富田俊樹(#2)。これに内田篤基(#25)と星野優位(#8)が続くと、後方から追い上げてきた渡辺祐介(#4)が星野と内田をパス。星野も内田を攻略し、オープニングラップは富田、渡辺、星野、内田、大城魁之輔(#22)、大倉由揮(#23)の順となりました。
能塚智寛(#3)は出遅れて1周目10番手からのレース。2周目、富田は約4秒のリードを奪い、2番手の渡辺も星野を4秒ほど離しました。
さらに、3周目にはトップ3台の間隔がそれぞれ約6秒に拡大。3番手星野の2秒ほど後方には大城が続き、さらに2秒後方には能塚が追い上げてきました。
そして4周目には、星野と大城と能塚が3番手争いを開始。5周目には大城と能塚が星野を抜き、さらに能塚は大城の攻略にも成功しました。
能塚が3番手に浮上した段階で、2番手の渡辺とはすでに約9秒差。さらにトップの富田は、渡辺に対して約6秒のアドバンテージを築いていました。
6周目、3番手争いを繰り広げた3台と比較的近い距離にいた大倉が、背後から安原志(#10)に追突され、これで両者が転倒。代わりに内田が6番手となりました。
レース終盤になっても、富田は安定したペースでトップを快走。2番手の渡辺は単独走行を続け、3番手の能塚は後続を引き離しました。
一方、5番手の星野には内田が接近。しかしここは、星野が冷静に対処して順位を守りました。
そしてレースは、再び10周でチェッカー。最初から最後まで危なげなく走行した富田が勝利を収め、渡辺が2位、能塚が3位、大城が4位、星野が5位、内田が6位でした。
IA1ヒート3
この日3度目のスタートでホールショットを奪ったのは渡辺祐介(#4)。これに富田俊樹(#2)、大倉由揮(#23)、内田篤基(#25)、能塚智寛(#3)が続くと、まずは能塚が内田をパス。
1周目に3番手の大倉は2番手の富田から3秒ほど離され、その背後には能塚が迫りました。
2周目、能塚が大倉を抜いて3番手にポジションアップ。
トップ争いでは富田が先行し、この間に能塚も2台との距離を詰め、富田と渡辺と能塚がそれぞれ約1秒間隔で続くトップグループを形成しました。
数秒離されたセカンドグループは大倉、内田、大城魁之輔(#22)、小方誠(#5)、大塚豪太(#7)までが縦に長い状態。3周目以降、大倉はトップ3からさらに遅れ、トップ争いと4番手争いの5台がほぼ分断されました。
セカンドグループでは、小方と大塚が徐々に遅れはじめ、5周目の段階では大倉と内田と大城による3台の4番手争いに。翌周には、内田が大倉へ激しく迫りました。
一方のトップ争いは、富田が2秒ほど先行し、2番手の渡辺を約1秒差で能塚が追う状態が継続。
7周目、能塚が微妙にタイムを落とし、逆に渡辺は富田との距離を少し詰めました。この周、内田と大城が大倉をパス。この間に小方と大塚が距離を詰め、6番手に後退した大倉の背後に迫りました。
ラストラップとなった9周目、トップの富田と2番手の渡辺は1~2秒差で、渡辺と3番手の能塚は約2秒差。
ここから、能塚が猛プッシュして渡辺に迫りました。しかし残り僅かのところで能塚は転倒。
レースは富田が勝利して3ヒート制覇を達成し、渡辺が2位、内田が3位、再スタートした能塚が4位、大城が5位、順位を守った大倉が6位でした。
●ヒート1優勝/ヒート2優勝/ヒート3優勝 富田俊樹(#2)
一昨年に3ヒート制の導入がスタートしてから、ずっと3ヒートとも勝ちたいと思っていたのですが、なかなかうまく決まらなくて、ようやくここで達成することができました。
今年の開幕戦ではこのHSR九州で両ヒート優勝できていましたが、レース時間が短い3ヒートでも全部勝てるとは思っていなかったのですごくうれしいです。
チームメイトとも表彰台に上がれて、しかもヒート2とヒート3ではヤマハのワン・ツー・フィニッシュ。
さらにIA2ではジェイが早々とシリーズタイトル獲得を決め、今日はもう完全にヤマハデーだと思います。
皆さん、引き続き応援よろしくお願いします!
IA2ヒート1
決勝レースは30分+1周の2ヒート制。そのヒート1では鈴村英喜(#9)がホールショットを奪い、柳瀬大河(#10)や西條悠人(#7)、中島漱也(#5)が続きました。
開幕から前戦まですべて勝利を収めているヤマハファクトリーチームのジェイ・ウィルソン(#16)はやや出遅れましたが、それでも1周目に3番手まで浮上。2周目には、早くもトップに立ちました。
この周、柳瀬は転倒により9番手まで後退。これで上位勢はウィルソン、鈴村、西條、中島、鳥谷部晃太(#4)、浅井亮太(#21)のオーダーとなりました。
3~4周目、ウィルソンがリードを拡大する一方で、鈴村を先頭として7台ほどが僅差で連なる2番手争いがスタート。
5周目には、西條が鈴村を抜いて2番手、鳥谷部が中島と鈴村をパスして3番手に浮上しました。
6周目には、中島と浅井も鈴村をパス。7周目には、鳥谷部が西條を抜き、柳瀬と横澤拓夢(#36)も鈴村の攻略に成功しました。この段階で、トップのウィルソンは10秒以上のリードを確保。その後も単独走行を続けました。
一方、鳥谷部は西條を3~4秒離して2番手キープ。西條も後続とは4秒ほど離れた状態で、4番手争いでは8周目に浅井が中島を抜きました。レース後半、3番手の西條から6番手の柳瀬までが、縦に長い3番手争いのグループに。
ラスト3周となった15周目には、この中で4番手の浅井に中島が迫りました。
しかし最後まで順位の変動はなし。レースは17周でチェッカーとなり、ウィルソンが優勝、鳥谷部が2位、西條が3位、浅井が4位、中島が5位、終盤にやや離された柳瀬が6位となりました。
IA2ヒート2
ヒート1の結果により、ランキングトップのジェイ・ウィルソン(#16)は浅井亮太(#21)を135点、柳瀬大河(#10)を139点リードした状態。
チャンピオン決定がかなり濃厚な状態でこのヒート2に臨みました。レースは西條悠人(#7)がホールショットを奪い、鈴村英喜(#9)が続きましたが、ウィルソンがすぐに両者をパスしてトップに浮上。
1周目はウィルソン、西條、鈴村、横澤拓夢(#36)、柳瀬の順でクリアしました。
ヒート1で2位入賞の鳥谷部晃太(#4)は、他車と接触した影響もあって出遅れ、1周目15番手からの追い上げを強いられました。レース序盤、西條はウィルソンに大きく離されることなく2~3秒差をキープ。
上位勢では横澤もペースが速く、3周目には西條と約4秒差の3番手まで浮上してきました。
5周目になると、西條のラップタイムが2秒ほど落ちはじめ、これでウィルソンがリードを拡大。
2番手の西條と3番手の横澤は5秒程度の差がキープされました。7周目、鈴村を抜いて柳瀬が4番手に浮上。
この段階で3番手の横澤とは6秒ほどの差がありましたが、3周ほどでギャップを埋め、10周目には横澤と柳瀬、さらに1周目8番手から追い上げてきた中島漱也(#5)が、僅差の3番手争いを開始しました。
そして12周目に、柳瀬と中島が先行。さらに横澤の背後には浅井が迫り、14周目に横澤を抜くと、柳瀬と西條と中島と浅井が僅差の2番手争いとなり、さらに2秒ほど間隔を開けて横澤と鈴村と鳥谷部が続く、7台のグループとなりました。
ラスト2周となった16周目、この中で浅井が中島と西條を抜いて3番手。さらにラストラップには、鳥谷部が2台を抜きました。
レースは、ウィルソンが優勝。これにより、開幕から全勝で2戦を残してシリーズタイトル獲得を決めました。
2位に柳瀬、3位に浅井、4位に鳥谷部、5位に西條、6位に中島が入賞しています。
●ヒート1優勝/ヒート2優勝 ジェイ・ウィルソン(#16)
(以下、カンペを読むことなくすべて日本語で)ありがとうございます。この1年の皆さんのサポートに感謝します。
ヤマハファクトリーレーシングチーム、ダンロップ、SHOEI、ダートフリーク、FOXに感謝します。
そして、妻と娘に感謝します。日本は私の第2のふるさとです。ありがとうございます!
レディース 決勝
15分+1周の1レースとなった決勝でホールショットを奪ったのは、2ヒート制だった前戦のヒート1で今季初優勝を挙げた久保まな(#3)。
これに畑尾樹璃(#27)と濱村いぶき(#9)とポイントリーダーの小野彩葉(#4)が続くと、濱村が畑尾を抜きました。さらに、前戦ヒート2勝者の本田七海(#2)が小野をパス。しかし直後に本田は転倒しました。
畑尾は濱村を再逆転。スタートで大きく出遅れた川井麻央(#1)は激しく追い上げ、1周目は久保、畑尾、濱村、小野、川井がトップ5となり、本田は楠本菜月(#5)に次ぐ11番手でオープニングラップをクリアしました。
2周目、ジャンプの着地で濱村が畑尾に追突して両者転倒。これで濱村はリタイヤとなり、畑尾は大きく遅れました。
川井は2周目に2番手まで浮上。この段階で、トップの久保は約6秒のリードを奪っていました。
しかし3周目以降、川井が3番手の小野を引き離しつつ、1周につき1~2秒のペースで追い上げ。3周目、6番手まで追い上げていた本田が前を走っていた瀬尾柚姫(#19)と接触転倒し、本田は10番手、瀬尾は14番手まで順位を下げました。
5周目、箕浦未夢(#10)をパスして4番手まで追い上げてきたのは、スタートで出遅れていた楠本菜月(#5)。
6周目には、川井がトップを走る久保の背後にぴったりつけ、本田は5番手まで順位を上げました。
ここから残り3周、久保と川井はテール・トゥ・ノーズの状態を継続。しかし最後まで久保が逃げ切り、そのまま9周目にトップチェッカーを受けました。
川井が2位。8周目には小野、楠本、本田の3台が3番手争いを開始し、最終ラップで2台をパスした本田が3位、小野が4位、楠本が5位でした。
●優勝 久保まな(#3)
今回の勝利は素直に、めっちゃうれしいです。忙しい中で練習に連れてきてくれたお父さんお母さん、ほんまにありがとう。
コースサイドで応援してくださっていた皆さん、走りながらちゃんと見えていました。
最後かなり追いつかれて、レース展開が怪しいことになっていたんですが、最後まで踏ん張れたのは皆さんのおかげです。
まさかの、シーズン後半にランキングトップ浮上でドキドキしていますが、残り2戦も楽しく走ろうと思っています。