年間7戦で競われる2022年の全日本モトクロス選手権シリーズ。前戦から約2ヵ月間のインターバルを挟み、第3戦SUGO大会が宮城県南部のスポーツランドSUGOで開催され、7月17日(日)に各クラスの決勝レースが実施されました。
土曜日はマディコンディションの影響によりコースの半分以上がショートカットされ、全日本最高峰クラスとなるIA1のラップタイムが1分10秒前後という超ショートコースでの予選に。日曜日は、再び夜中に降雨があったものの、前日に多くのセクションを温存したことや懸命なコースメンテナンスが功を奏し、IA1とIA2はフルコースが使用できました。ただしレディースクラスは、前日同様の超ショートカットコースとなりました。天候は曇りで、最高気温は26℃。湿度が高く蒸し暑い大会でした。
IA1ヒート1
今大会、このクラスは15分+1周の決勝3ヒート制が予定されていましたが、路面状況悪化によるさまざまな影響を考慮して、土曜日朝の段階で30分+1周の2ヒート制に変更されることが決定。さらに日曜日朝には、レース時間が25分+1周に短縮されることが決まりました。
そのヒート1では、ヤマハファクトリーチームから参戦するポイントリーダーの富田俊樹(#2)がホールショット。ホンダに乗る小島庸平(#6)、ヤマハを駆る町田旺郷(#11)、ヤマハファクトリーチームの渡辺祐介(#4)、ホンダサポートの大城魁之輔(#22)、カワサキファクトリーチームの能塚智寛(#3)が続きました。2周目、町田が小島を抜いて2番手に浮上。富田はリードを約4.5秒に広げましたが、翌周にミスしてその差は約2.5秒に縮まりました。
この3周目、渡辺が小島を抜いて3番手に浮上。その後、小島は少しずつ順位を落としていきました。4周目、渡辺はミスで少し遅れましたが、翌周以降は約1.5秒差で町田をマーク。レースが後半に入った7周目、それまで粘っていた町田がマシンをストップさせましたが、渡辺も同じラインにいて抜けませんでした。この周、トップの富田もバックマーカーに阻まれ、これで町田が肉迫。しかし翌周、富田は冷静にリードを拡大し、逆に町田は渡辺の先行を許しました。
3番手に後退した町田の背後には、大城が接近。7周目以降、町田のペースは落ち、9周目には大城、10周目には前の周に5秒近く遅れていた能塚が、町田をパスしました。レース終盤、富田と渡辺と大城は1~2秒の間隔で三つ巴のトップ争い。しかし最後まで順位は変わらず、富田が優勝、渡辺が2位、大城が3位でした。能塚は4位、町田は5位、大倉由揮(#23)とのホンダ同士によるバトルを制して、大塚豪太(#7)が6位となりました。
●優勝 富田俊樹(#2)
めちゃくちゃしんどかったです。とくに、ヨーロピアンセクションに向かうところが難しくて、何度かあわや転倒というミス。そのリカバリーで腕上がりになりましたが、なんとか後続を抑え切ることができました。スポーツランドSUGOは得意で自信もありましたし、コンディションのことを考えたら後ろのライダーたちもそう簡単にはパスできないだろうと分析。後ろが誰なのか気にすることなく、最後まで冷静に走りました。
IA1ヒート2
ホールショットを奪ったのは大城魁之輔(#22)。これに富田俊樹(#2)と小方誠(#5)が続いて1周目をクリアしました。2周目、能塚智寛(#3)が町田旺郷(#11)を抜いて4番手にポジションアップ。3周目になると町田を先頭とする5番手以下は、能塚から遅れていきました。トップグループは、大城を1~2秒差で富田がマークする一方で、富田と小方、小方と能塚はそれぞれ3~4秒程度のギャップ。4周目になると小方は富田からさらに少し離され、5~6秒ほどのビハインドとなりました。
トップ争いでは、6周目あたりから富田が大城との距離を詰め、7周目からは接近戦に。先頭を走る大城はややペースが落ち、この間に小方も上位2台に再び近づきました。さらにその背後からは、ハイペースをキープし続ける能塚が接近。そして10周目、富田まであと2秒に迫っていた小方を、能塚が抜いて3番手に浮上しました。
トップの大城は、9周目あたりから再びペースを上げ、これによりじわじわと引き離されはじめた富田に、3番手浮上で勢いに乗る能塚が一気に迫ると、11周目に逆転。この間に大城は、約3秒のアドバンテージを得ました。そして13周目のラストラップまで逃げ切った大城がトップでチェッカー。全日本最高峰クラスに昇格した初年度の3戦目(7ヒート目)で、初優勝を挙げました。
能塚は、抜いた富田を引き離して2位でフィニッシュ。富田が3位、ラスト数周はペースを落とした小方が4位に入賞しました。ミスで1周目10番手と出遅れた渡辺祐介(#4)は、5位まで追い上げてゴール。ヒート1は10位に終わったヤマハマシンを駆る星野優位(#8)が、このヒートでは粘りの走りで6位チェッカーを受けました。
●優勝 大城魁之輔(#22)
序盤からトッチ君(富田俊樹)に後ろからプッシュされていましたが、鬼のブロックを続けました。後ろが詰まっているのもわかっていましたが、どんだけジャマしてでも絶対に勝ちたいと考えて走りました。サインボードで残り6分というのを把握して、もうゴール後に倒れてもいいから全力を出し尽くそうと思いました。最終ラップに考えていたことは……、転ばないようにってことですかねえ。やりました、ありがとうございました!
IA2ヒート1
開幕戦で決勝3ヒート制が導入された、主に4スト250ccマシンで競われる若手中心のIA2クラス(2スト125ccマシンも参戦可能)。今大会の決勝レースは前戦に続いて2ヒート制となり、レース時間は25分+1周に5分短縮されました。そのヒート1では、開幕からここまで2大会5ヒートすべてで優勝を飾っているヤマハファクトリーチームのジェイ・ウィルソン選手がホールショット。これに続いた阿久根芳仁(#26)はやや順位を下げ、代わりに柳瀬大河(#10)が2番手に浮上しました。
1周目、ウィルソンは途中でミスするも4秒近いリードを確保。2番手の柳瀬を西條悠人(#7)、神田橋瞭(#20)、佐々木麗(#22)が追いました。2周目以降、ウィルソンは順調にリードを拡大。5周目の段階で、2番手との差は約10秒に拡大しました。一方、2番手争いは2~3秒差程度の比較的近い位置で柳瀬から佐々木までが続く展開となり、4周目には柳瀬のミスで3番手の西條が背後に接近。翌周には柳瀬が転倒して4番手に後退し、西條が2番手、神田橋が3番手に浮上しました。
レース前半が終わる6周目、西條が一気にペースを上げたこともあり、ウィルソンと西條の差は8秒以下に。さらに翌周以降も西條のほうがペースは速く、8~9周目には両者の差が6秒以内となりました。しかし10周目に西條がミスしてウィルソンのリードが拡大。そのままトップチェッカーを受けました。西條は2位。3位には、6周目にミスした神田橋を抜いて、その後にやや引き離した柳瀬が入賞しました。7周目に神田橋を抜いた佐々木が4位。1周目7番手から追い上げてきた鳥谷部晃太(#4)がラストラップに神田橋を抜いて5位となり、神田橋は6位でした。
●優勝 ジェイ・ウィルソン(#16)
マディから少し乾きはじめた土が深く、なおかつスリッピーな場所がたくさんある、とても難しいコースコンディションだったので、このレースは60~70%程度の走りに徹しました。ハードにプッシュすると、すぐにクラッシュしてしまいそうな感覚があったためです。スタートで使用するギヤをいつもと変えるなど、自分が持つテクニックを駆使しながら走りを改善して、この走りづらい路面に対処しました。ホールショットが効きましたね。
IA2ヒート2
ホールショットを奪ったのは鳥谷部晃太(#4)。これに阿久根芳仁(#26)、真野凌輔(#23)、ジェイ・ウィルソン(#16)、柳瀬大河(#10)、西條悠人(#7)が続きましたが、西條はミスにより大きく後退。上位勢は積極的に順位を入れ替え、鳥谷部、真野、ウィルソン、阿久根、柳瀬の順で1周目をクリアしました。2周目、鳥谷部がミスでやや失速した隙に真野が先行。さらにウィルソンも鳥谷部をパスしました。柳瀬は阿久根を抜いて4番手。しかしこの段階で、3番手の鳥谷部からは5秒以上遅れてしまいました。
3周目、ウィルソンは低速コーナーで転倒を喫したもののすぐに復帰。翌周には一気に真野との距離を詰め、逆転に成功しました。抜かれた真野は6周目からペースが落ち、一時は4秒ほど離れていた鳥谷部が接近。7周目には、鳥谷部が逆転して2番手に順位を上げました。この段階で、トップのウィルソンは約7秒のアドバンテージを確保。その後は後続との距離を保ち、ウィルソンが開幕から無キズの7ヒート連勝を達成しました。
2番手に復帰した鳥谷部はその後、後続を引き離して単独走行に。そのまま2位でゴールして、今季初表彰台に登壇しました。8周目には、ペースが落ちた真野を柳瀬がパス。さらに翌周には、1周目8番手から追い上げてきた中島漱也(#5)も真野を抜き、柳瀬が3位、中島が4位、真野が5位となりました。6位には1周目9番手から順位を上げた池田凌(#6)が入賞しています。
●優勝 ジェイ・ウィルソン(#16)
ヒート1では一番アウト側のスターティングゲートを選択したのですが、1コーナーまでのストレート区間の状況がだいぶ変わっていたので、ヒート2では逆にイン側を選択。ホールショットではありませんでしたが、スタートで5番手以内であれば問題はありません。トリヤベ(鳥谷部晃太)と一緒に走れて、ワン・ツーで表彰台に上がれたのもうれしいです。トリヤベは、2020年に彼がオーストラリアにいたときのパートナーで、友人ですから。
レディース 決勝
2スト85ccマシンとホンダの4スト150ccマシンがエントリーするレディースクラスは、小排気量かつスモールホイールのマシンを使うことや、予選落ちが発生しないエントリー台数だったことなどから、土曜日に予定されていたレース形式の予選がキャンセルされ、日曜日朝の公式練習に代わりタイムアタック形式の予選を実施。また、コースコンディションはかなり回復したものの、決勝も超ショートカットコースが使われ、レース時間は10分+1周に5分短縮されました。
決勝でホールショットを奪ったのは畑尾樹璃(#27)。開幕から連勝中の小野彩葉(#4)がスタート直後に順位を上げ、2番手で1周目をクリアしました。2周目には、本田七海(#2)が久保まな(#3)らをパスして3番手に浮上。3周目には畑尾から久保までの4台がトップグループを形成しましたが、久保は4周目にややペースを落として集団から遅れました。
5周目、小野が畑尾を抜いてトップに浮上。畑尾の背後には本田が迫り、8周目に本田が先行しました。9周目、畑尾は転倒を喫して久保から大きく遅れる4番手に後退。一方で本田は、小野をパスして先頭に立ちました。しかし抜かれた小野も粘り、ラストラップとなった10周目に入ったところで再逆転。そのまま小野、本田、久保、畑尾の順でチェッカーを受けました。
しかしレース後、本田を抜くあたりで小野に黄旗無視の違反があったとのジャッジにより、小野は1順位降格に。この結果、本田が昨年最終戦以来の優勝、小野が2位、久保が3位、畑尾が4位となりました。ディフェンディングチャンピオンの川井麻央(#1)は1周目16番手と大きく出遅れ、5位まで追い上げてゴール。タイムアタック予選トップの川上真花(#12)もスタートで出遅れ、6位でフィニッシュしました。
●優勝 本田七海(#2)
昨年は最終戦を優勝で締めることができ、今年もレースをするか悩んでいたのですが、スポンサーの方々からの支援により続けることができました。しかしシーズンオフは後進の育成などに力を入れていたこともあり、序盤の2戦は例年と比べて準備不足の状態。そこで今大会までのインターバルを利用して、乗り込みなどの練習をしました。結果的には優勝ですが勝負では負けているので、地元大会となる次戦の名阪スポーツランドでは、今日の課題をしっかり改善して、ファンの方々と一緒に笑って終われるレースをしたいです。