【後編・石浦諒選手×大塚豪太選手】
全日本モトクロスライダーとマフラー開発者というふたつの顔を持つ、「GOSHI Racing」の石浦諒選手。ケガにより自身は今季のレース活動を休止している状態ですが、その一方でT.E.SPORTの大塚豪太選手にマフラーをサポートし、テストやレースに帯同してマフラー開発を続けています。ふたりの全日本ライダーは、お互いをどう見ているのでしょう?
石浦諒選手から見た大塚豪太選手とは?
これまでは“自分のレース”を戦ってきた「GOSHI Racing」の石浦諒選手にとって、完全に裏方としてマフラー開発のために他の選手をサポートするのは今年が初。そして、マフラーの実戦テストを他の選手に委ねるのも今回が初めてのことになります。石浦選手から見て、「T.E.SPORT with GOSHI」の大塚豪太選手は、どのようなライダーに映っているのでしょうか?
「そもそもこれまで、IA1に参戦する同じような年齢のライダーと、マシンやレースについて話す機会はありませんでした。ベテラン選手とは接点もあったのですが……。そして、マフラーの開発やECUのセッティングは、完全に自分の感覚だけでやっていたので、大塚選手に使用してもらうようになって、『こういうライダーもいるんだな』と思いました」
といっても石浦選手は、大塚選手が自分と違うことをネガティブに捉えているわけではありません。むしろ、その逆。「自分にないところをたくさん知ることができて、新しい発見も多いんです」と、他の選手がマフラー開発に加わることのメリットを強調します。そして同時に、大塚選手が開発に向いている部分もあると……。
「大塚選手は、マシンに対する好みがかなりはっきりしているんです。その軸がブレないから、開発側としては合わせていきやすいんです。ただし、もっとこちら側の技術を上げていかないと、大塚選手の要求に応えられないんですけどね」
GOSHIの活動に大塚選手は好成績を誓う
では、今年はGOSHI Racingのサポートを受けながらIA1に参戦することになった大塚選手は、「54R!」のオリジナルマフラーや石浦選手をはじめとする開発陣について、どのように感じているのでしょう?
「GOSHIマフラーでの初乗りは、3月に入ってから。開幕戦までは1ヵ月程度と時間がなかったのですが、そこから急ピッチで開発を進めてくれました。本当にみんな、驚くほど一生懸命で、かなりの日数をテストに充ててくれました。メーカー事前テストなどに帯同するだけでなく、GOSHI Racingとしてテストの日程も組んでくれたので、3月中旬から後半にかけてはずっと熊本にいるほど。ほぼ『GOSHIの大塚です!』というくらいでした」
ちなみに大塚選手のマシンは、エンジンがノーマルでGOSHIのマフラーとGETのECUを装着した状態。ノーマル以外のECUを使うのは大塚選手にとって初めてのことで、その点でも未知の世界だったようです。そして、これにより大塚選手も自分の走りをより正確に分析できるようになりました。
「自分は高回転まで引っ張って乗るタイプだと思っていて、マフラーとECUセッティングで、自分の好みに仕上げてもらいました。とはいえ、データロガーで確認すると、実際に多用しているのは中回転域。好みとはちょっと違う部分もあって、ロガーを使ってこれを知ることができたのも新鮮でした。まあ、ロガーがあるとアクセル開けてないのもバレバレなんですけどね……」
このように、新しいことをいくつも受け入れながら、大塚選手も石浦選手やGOSHIの開発メンバーと同じように、いいマフラーを開発するという共通の目標に向かって邁進中。そして大塚選手は、同じライダーだからこそわかる石浦選手の気持ちに、結果で応えたいと思っています。
「最初は特に、フィーリングをうまく伝えられることができず混乱させてしまったこともあったと思うのですが、こちらとしても徐々に慣れてきた感はあります。開発責任者が同じ現役ライダーの石浦選手なので、だいぶ助けられているだけ……かもしれませんが。なんにしても、本当だったら石浦選手が自分で実戦テストしたかったはずなのに、ケガでその計画がダメになり、その役割を自分に託してくれたという背景があるので、とにかくみんなの気持ちを背負って走り、いい成績を残したいと思っています!」
「会社の協力と理解に結果で恩返ししたい!」
ケガにより今季はレース参戦を休止中ですが、とはいえ石浦選手は現役ライダー。だからこそ、大塚選手をサポートする際に数々のメリットが生まれます。
「例えば、会社で報告書をまとめるようなときに大塚選手のコメントが必要になるのですが、めっちゃ短文で送られてきても、『立ち上がりでブワッ』なんてライダー特有の擬音が混ざっていた場合でも、僕なら状況をたいてい理解できます。これは、もちろんレースの現場でも同じ。今後、マップの調整などでも活きてくると思います」
石浦選手は、このように話しながら“ライダーあるある”を笑っていました。そして石浦選手は、CRF450Rのマフラー開発責任者として、今後の目標をこのように語ります。
「我々のプロジェクトは、合志技研工業として技術力を高めるというのはもちろんなのですが、CRF用のマフラーについては、最終的に市販できるところまでたどり着くという目標を掲げています。現在はまだその途中段階。大塚選手の協力を得ながら、もっと性能を上げていきたいと思います。合志技研工業は、松原さん(代表取締役社長の松原美樹氏)を筆頭に、レースを応援するという雰囲気がいっぱい。開幕戦のHSR九州にはブースも出展していましたが、じつは社員のうち希望者には、会社が入場チケットをプレゼントしてくれるんです。そこまでしてくれる会社のためにも、マフラー開発者として結果を残したいと思っています。その一方でライダーとしても、ケガが治ったらすぐにレース復帰できるよう、むしろ昨年までよりも筋トレはかなりやっています。ぜひ、GOSHIの活動に注目していてください!」
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