連覇のジェイを強敵が襲うIA1、昨年以上に激戦必至のIA2!

今季の全日本モトクロス選手権シリーズは、残念ながら開催大会数が昨年より1戦減り、全7戦で実施されます。
北海道大会はなくなり、中国大会が復活。昨年はいつもより早めに関東で開幕しましたが、今年は2023年以前までと同じく4月の第2週にHSR九州で初戦が実施されます。
それに先立ち、今シーズンの概要や各クラスの見どころなどを、凝縮してお届け!
2025年シーズンも全5会場で熱戦を!

今シーズンの全日本モトクロス選手権シリーズは、熊本県のHSR九州、宮城県のスポーツランドSUGO、埼玉県のオフロードヴィレッジ、広島県の世羅グリーンパーク弘楽園、奈良県の名阪スポーツランドを舞台に実施されます。
このうちスポーツランドSUGOとオフロードヴィレッジは、それぞれ春と秋に大会を開催。
これにより、シリーズは全7戦で競われることになります。
残念ながら、2023年に復活した北海道大会は再び開催が見送られましたが、昨年は開幕前に中止が決定された世羅グリーンパーク弘楽園での中国大会が復活。
中国・四国地方のモトクロスファンが、アクセスしやすい大会が増えました。

開幕の舞台はHSR九州。昨年はオフロードヴィレッジで初戦を迎える異例のカレンダーでしたが、今季は2023年までの“例年どおり”に戻されています。
九州での全日本開催は、この開幕戦のみ。九州のモトクロスファンは、年に一度の観戦チャンスをお見逃しなく!。
ポイントスケール変更&ヒート数現象で接戦に!

2020年に初導入された1大会3ヒート(レース)制が、今年もIA1クラスとIA2クラスの数戦に用いられることから、2025年3月現在の発表では、IA1が年間17ヒート、IA2が年間16ヒート、レディースクラスは各大会1レースで年間7ヒートで競われます。
昨年と比べて、IA1とIA2は2ヒートずつ減少(レディースは昨年同様)。レース数が少ないことで、シリーズランキングはより接戦になることが予想されます。
さらに今季は、2021年に変更されたばかりのポイントスケールを、再び大幅に刷新。
2020年以前は20位以内、2021~2024年は15位以内に与えられていたポイントが、30位以内の完走者(優勝者の75%以上の周回数を完了したライダー)に付与されます。
全日本の決勝フルグリッド数は30台。つまり、完走扱いになればポイントが付くことになります。
2021~2024年は、優勝と2位では5点差、2位と3位では4点差……というように、上位のポイント差が大きかったのですが、これが優勝と2位で3点差、2位と3位では2点差に縮まることで、毎レースの上位入賞を前提に考えると、シリーズランキングは混戦傾向が予想されます。
ただし新ポイントスケールは、優勝で獲得できる点数が10点増えて35点となるため、チャンピオン争いに加わっているような有力ライダーが、レースを途中でリタイアしてノーポイントに終わった場合、ライバルとより大きな差がつくことになります。

試しに、昨年は中島漱也選手が40点差で横澤拓夢選手を退けてチャンピオンに輝いたIA2クラスで、新ポイントスケールによる計算をしてみたところ、最終戦を終えて8点差だったことに。
第4戦ヒート2を中島選手がリタイアしたことが、より大きな影響となったためです。
また昨年のレディースクラスは、5点差で川井麻央選手が本田七海選手をシーズン終盤に逆転して制しましたが、新ポイントスケールだと、本田七海選手が18点差でチャンピオンに。開幕戦で失格を喫した川井選手は、そこで失ったポイントを挽回できずに終わっていました。
シリーズチャンピオンを狙うライダーたちは、これまで以上に上位入賞をコンスタントに続けることが求められます!

ジェイ・ウィルソン選手の3連覇を阻む者は?

4スト450ccマシンでの参戦が主流となっている、全日本最高峰のIA1クラス。昨年は、ヤマハファクトリーチームに所属するオーストラリア出身のジェイ・ウィルソン選手(#1)が、19ヒートで11勝をマークして(全日本フル参戦ライダーに敗れたのは4度のみ)、連覇を達成しました。
そのウィルソン選手は今季、唯一のヤマハファクトリーライダーとして参戦。もちろん、今季もチャンピオンの最有力候補です。

しかし日本人選手たちも、打倒・ウィルソン選手という目標に向けて準備万端。ホンダ勢の横山遥希選手(#2)と大倉由揮選手(#4)は、昨年もウィルソン選手に勝利した実績があり、とくに横山選手はドライコンディションでも競り勝っています。

両者ともに、オフシーズンは海外レースでさらに速さを磨いてきました。また、カワサキファクトリーチームから参戦する能塚智寛選手(#5)も、スプリントの速さには定評があるライダー。そのスピードを、今季こそリザルトに結び付けたいところです。
また、昨シーズンにウィルソン選手から1勝を挙げた2023年度IA2クラスチャンピオンのビクトル・アロンソ選手に代わり、イタリア出身で世界選手権の参戦経験もあるジュゼッペ・トロペペ選手(#42)が、ガスガスを駆り同じチームから全日本を戦うことが決まっており、欧州における過去の成績から予想すると、こちらもウィルソン選手の手強いライバルとなりそうです。

ヤマハは今季、ファクトリーに次ぐセカンドチームを発足しておりここから参戦する大城魁之輔選手(#8)や渡辺祐介選手(#15)の活躍にも期待。
ホンダを駆る大塚豪太選手(#6)は、しぶといレースで今季も上位進出を狙います。今季は新たにピレリタイヤを履くカワサキ勢の内田篤基選手(#10)、IA2クラスからステップアップするカワサキ乗りの西條悠人選手(#37)やヤマハを駆る浅井亮太選手(#37)の走りにも注目です!
中島&横澤の2トップに、強敵現る!

主に4スト250ccマシンが参戦するIA2は、フル参戦するライダーのほとんどが若手と中堅。
昨年は、ヤマハの中島漱也選手とホンダを駆る横澤拓夢選手が、ランキング3番手以下を大きく離しながらし烈なチャンピオン争いを繰り広げ、シーズン後半に逆転した中島選手がチャンピオンに輝きました。

今季、中島漱也選手(#1)と横澤拓夢選手(#2)はともにこのクラスに継続参戦。中島選手は、ヤマハがファクトリー系に次ぐセカンドチームとして発足した「YAMAHA BLU CRU RACING TEAM」で活動するため、昨年以上に充実した体制とIA1王者ジェイ・ウィルソン選手のサポートで、レースに臨めるはずです。
しかし、昨年と同じく自身のチームから参戦する横澤選手は、中島選手より5歳年上の経験豊富なライダー。簡単に勝利を譲ることはないでしょう。

そしてこの2名の前に今季現れた強敵が、かつてモトクロス世界選手権MX2のスズキファクトリーチームに在籍し、2023年の全日本第8戦IA2にスポット参戦してヒート優勝も挙げた、ドイツ出身のブライアン・スー選手(#53)。
IA1クラスのジュゼッペ・トロペペ選手と同じチームで、ガスガスを駆ります。実力と実績では、間違いなく優勝候補のひとりに挙げられるでしょう。

昨年、中島選手と横澤選手に次ぐランキング3位となった西條悠人選手は、今季からIA1にステップアップ。このため、日本人勢で中島選手と横澤選手にもっとも近い位置にいるのは、こちらも今季はヤマハセカンドチームの所属となる19歳の田中淳也選手(#4)です。
全日本ヒートレースでの過去最高順位は昨年の2位。今年は初優勝も狙います。横澤選手のチームから参戦する20歳の柳瀬大河選手(#5)は、昨年の開幕戦で初優勝を記録。
今季はリザルトを安定させ、さらなるランクアップを目指します。
若手が多いIA2クラスは、シーズン途中でニューヒーローが誕生することも……。毎戦、熱いバトルから目が離せません!
女王・川井麻央に死角なし!?

ホンダの4スト150ccとそれ以外の2スト85ccマシンが混走するレディースクラス。
昨シーズンは、ホンダ4ストに乗る川井麻央選手とヤマハ2ストを駆る本田七海選手が、2023年に続いて激闘を繰り広げ、川井選手が5ポイント差で連覇を達成しました。
今季、その本田選手はレディースクラスには参戦せず、IBオープンクラスに挑戦。
このため、ディフェンディングチャンピオンの川井麻央選手(#1)にとっては、この2年間の最強ライバルがいないシーズンとなります。
ただし、川井選手とて油断は禁物。ヤマハ2ストを駆る川上真花選手(#3)は、昨年もシーズン終盤までチャンピオン争いに食らいついており、その走りはまだまだ発展途上です。
昨年度ランキング4位の楠本菜月選手(#4)は、昨年と同じくホンダ4ストでの参戦ですが、今季は多くのレディースチャンピオンを輩出してきた「TEAM HAMMER」からのエントリ―。
昨年度ランキング6位の箕浦未夢選手(#6)は、レース序盤に強く、その勢いが続けばさらなる好成績も狙えるライダーです。