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GOSHI Racingの新たな挑戦

今季開幕戦、地元大会となるHSR九州での開催にもかかわらず「GOSHI Racing」の姿はありませんでした。しかし会場の目立つ場所には、大きなGOSHIのテントと展示スペース。そして石浦諒選手は、T.E.SPORTのパドックで忙しそうに作業を続けていたのです。今年の「GOSHI Racing」にいったい何が? まずは石浦選手にお話をうかがいました!

“GOSHI・石浦”を襲った不運のケガ……

「GOSHI Racing」の母体となる合志技研工業は、バイクやクルマの部品を供給する、熊本県合志市を拠点とするパーツサプライヤー。主にホンダ系の部品を量産し、市販ではなくメーカーに直接納入しています。そんな合志技研工業で、技術力の向上とアピールのために社内業務として続けられているのが「GOSHI Racing」。最初はロードレースに着手し、2018年からは全日本モトクロス選手権IA2の石浦諒選手をメインとしてモトクロスでも活動してきました。 しかし2021年の開幕戦、どのクラスにも「GOSHI Racing」のチーム名はナシ。代わりに見つけたのは、全日本最高峰のIA1に参戦する大塚豪太選手のチーム名にあった「T.E.SPORT with GOSHI」という表記でした。同じホンダ系のチームであるT.E.SPORTにGOSHIの名が加わり、石浦選手は会場にいるのに参戦せず……。これはどういうことなのか、石浦選手に直接お話をうかがいました。 「昨年の最終戦に向けた事前テストでマシントラブルにより転倒して、脱臼に加えて手首の舟状骨を折ってしまいました。手術は無事に終わって現在はボルトで固定した状態ですが、舟状骨はかなり回復が遅く、4ヵ月が経過した現在も骨は完全についておらず、手首の動きも半分程度というイメージです。昨年のバイクは、マフラーの開発と車体の改良を続けてきた中で、かなりいい仕上がりと感じていて、最終戦で勝負したいと思っていた矢先の出来事だったので、かなり悔しかったです」
しかも石浦選手には、このケガによる悔しさを倍増させてしまうような今季の計画がありました。2018年に「GOSHI Racing」として参戦する以前、IAに昇格した2012年からずっとIA2に参戦してきた石浦選手でしたが、じつは今季は最高峰のIA1にエントリーすることが決まっていたのです。 「さらに技術力を高めるため、今シーズンはIA1に参戦してオリジナルマフラー(54R!)の開発を進めるつもりでいました。昨シーズン中からすでに、今季に向けて準備を進めてきたので、開発者としてはその性能を自分のライディングによって実戦でテストできなかったことが残念ですし、ひとりのライダーとしてはIA1に挑戦できるはずだったのに……という悲しさもあります」

それでも「飛躍の年」と前向きな石浦諒選手

石浦選手のケガにより、「GOSHI Racing」は全日本モトクロス選手権に自分たちのチームで参戦するという活動をしばらく休止。それでも、石浦選手の姿は開幕戦のパドックにありました。地元大会ですから、これそのものはとくに驚くことでもないのですが、石浦選手がいたのはT.E.SPORTのチームパドックでした。 「会社としての方針もあり、『GOSHI Racing』としての活動を休止する代わりに、IA1の大塚豪太選手に『54R!』のオリジナルマフラーをサポート。『T.E.SPORT with GOSHI』としてレースで実戦テストしてもらうことになったんです。僕は、開発スタッフのひとりとしてチームに帯同。開発メンバーでつくり上げたマフラーを使いながら、レースの現場で燃調セッティングを最適化するなどのサポートをしていくことになりました」 全日本モトクロスライダーであると同時に、合志技研工業の社員としてマフラー開発に携わる石浦選手。「全日本トップクラスの実力を持つ大塚選手からコメントを取得し、それをセッティングなどに反映していくという作業は、開発者としてスキルアップさせてくれると思います」と、自分でレースに出場できなくても気持ちは常に前向きです。 IA1で使われるCRF450Rは、2021年型でフルモデルチェンジ。そのため石浦選手たちGOSHIの開発メンバーは、昨年にこのプロジェクトを立ち上げた段階では従来型の2020年モデルを使用して技術的な研究を重ね、その後に2021年モデルがデリバリーされてから再び設計し直すという、変則的な開発プランを選択しました。昨年は、石浦選手がIA2にフル参戦。レース数は4戦と少なかったものの、IA2ではCRF250Rを使うため、石浦選手は開発テストとレースでマシンの乗り替えも強いられました。 「新型コロナウイルスの影響によりレースの数は少なかったのですが、やはり開発としては250のこともケアしながら450の新しいことに着手し、テストとレースで異なるマシンに対応しなければならなかったため、さまざまな部分で難しさもありました。その点、今年は450用のマフラー開発に専念できるので、開発スピードはかなり上がると自分たちでも期待しています!」

解析やセッティングもすべて自分で!

今季のレース参戦復帰は難しそうな状況の石浦選手ですが、全日本の会場にはすべて足を運ぶことが決まっています。これは、万全の体制で大塚選手にマフラーを使ってもらうためです。 「今季は、レースだけでなく事前テストも大塚選手に帯同。内部構造やエキゾーストパイプなどの改良も視野に入れているので、会社のほうでいいマフラーができたら大塚選手にテストしてもらい、気に入ってもらえたら実戦でも……と考えています」 さらに石浦選手は、“開発者”としてのレベルも上げるため、さまざまなことにもトライしています。 「マフラーを開発するためにより多くのデータが必要だと感じて、昨年から自分のマシンにGET製のECUとデータロガーを使用してきたのですが、大塚選手にも今年はGETを装着してもらっています。昨年は橋本さん(GETを取り扱うアズテック社の橋本毅氏)にセッティングなどをお願いしていたのですが、今年はパソコンを使用した解析やセッティング変更も基本的には自分でやっています。3月くらいに触りはじめたので、まだ完璧とは言えないかもしれませんが、一気に技術を習得しているところです」 開幕戦のT.E.SPORTのパドックには、大塚選手の走行が終了するたびに真剣な表情でパソコンを操作する石浦選手の姿がありました。「レースに出たい」という気持ちを押し殺しながら、開発者として奮闘する石浦選手。レースを戦うのは、走っているライダーだけではないのです。

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